6月29日にあった出光興産の株主総会。創業家の反対にあいながらも月岡隆社長らの再任が決まった=東京・六本木のホテル
出光興産と昭和シェル石油の合併に出光創業家が反対している問題で、出光経営陣は3日、公募増資による新株発行に踏み切ると発表した。創業家は出光株の3割超を持ち、合併を阻止できる拒否権を持つ。新株発行で創業家の持ち分比率が薄まれば、合併に向けて大きく前進する。ただ創業家側は新株発行の差し止めに動く構えで、対立は先鋭化しそうだ。
出光経営陣は早ければ20日にも、発行済み株式総数の3割にあたる4800万株を新たに発行し、1385億円を調達する。資金はベトナムで建設中の製油所の運転資金や、有機EL材料の開発費用などに充てる。また昨年末の昭和シェル株取得で膨らんだ借入金の返済にも使い、財務基盤の強化につなげる方針だ。
一方、創業家は一族や資産管理会社を通じて出光株の33・92%を持つ。合併には臨時株主総会で出席株主の3分の2の賛成が必要なため、創業家は合併を拒否できる。だが今回の新株発行で創業家の持ち分は26%台に低下するとみられる。
出光幹部は、「あくまで成長分野への投資のため」と説明するが、創業家代理人の鶴間洋平弁護士は「明らかに創業家の持ち分を希釈化する目的だ」と批判。近く、裁判所に新株発行の差し止めを求める仮処分を申請する考えを明らかにした。