二松学舎大付―明桜 六回裏明桜1死二、三塁、投手市川は山口(右)の強襲ゴロを足で止め、本塁に送球し三塁走者早川がタッチアウト=小林一茂撮影
(13日、高校野球 二松学舎大付14―2明桜)
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気迫のこもった足技が飛び出した。
二松学舎大付の左腕エース市川は六回、1点を奪われ、なおも1死二、三塁を迎えていた。明桜の4番山口の4球目。足もとを抜けそうな打球に右足を出した。ボールは足に当たって止まり、目の前でワンバウンド。急いで本塁へ送球し、三塁走者をタッチアウトにした。
リードは7点。だが、「いつも同点のつもりで投げている」と必死だった。後続を左飛に仕留め、1失点で切り抜けた。
「粘り強く」。市川にとって重い言葉だ。今年1月、市川は「もうやめたい」と仲間に弱音を吐いた。昨秋の東京都大会で帝京に逆転負けを喫した。その後の練習でも何をしてもうまくいかない。厳しい走り込みで心も折れかけた。中学時代、東京の練馬中央シニアでチームメートだった三塁コーチの佐藤は「好打者でエース。憧れの存在がこんなになるなんてびっくりした」。だが、佐藤らはあえて厳しい言葉を浴びせ続けた。バテている姿をみれば、「粘りが足らないんじゃないか」と。
4月の春季東京都大会でも日大三に1―16のコールド負けを喫した。ところが最後の夏を目前に控えた5月ごろ、市川は変わった。「打たれて当然。でも粘り強く投げる」と開き直った。
東東京大会は5試合で計5失点で3年ぶりの夏の甲子園に母校を導いた。「緊張した」という自身初の甲子園でも直球の内外角に投げ分け、丁寧に変化球でタイミングを外した。8回を投げて1失点。「また自信がつきました」。とっさに出た右足は粘り強くなった心の証しだった。(坂名信行)
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○永井(二) 5打数5安打。「フルスイングができた。(バットの)先っぽだったり、つまったり芯で捉えられていないので、次は芯でも捉えたい」