市口香代さん=奈良県五條市本町2丁目
今夏で99回目を迎えた全国高校野球選手権大会。82年前の第21回大会の時に発行された絵はがきが、奈良県五條市内で保管されていた。満員の観衆でにぎわう甲子園球場が描かれている。
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1935(昭和10)年に朝日新聞社が発行した絵はがき。当時は選手権大会の前身の全国中等学校優勝野球大会だった。
五條市本町2丁目で薬局を営む市口香代さん(82)の家の古いタンスに保管されていた。昨年見つけた市口さんが、「何かの役に立てば」と今年7月、旧知の元朝日新聞記者に絵はがきを預けた。それが朝日新聞奈良総局に届けられた。
94年に亡くなった市口さんの夫と、その父は、親子2代続けて朝日新聞五条通信局の記者だった。薬局兼自宅は通信局の局舎だった。
市口さんが昨年、古いタンスを開けると、古びた封筒が出てきた。表に「甲子園野球大會繪葉書(たいかいえはがき)(五枚一組) 昭和十年八月」と印刷され、脇には「定價(ていか)十銭」とあった。中には3枚の絵はがき。そのうち1枚の宛名に「市口粲郎(さんろう)殿」と亡き夫の名前があった。
「近ければ粲郎ちゃんを呼んであげるのにと思わし(略)来年はきっと連れて来てあげるよ 十三日 甲子園ニテ 父」
粲郎さんの父、禎太郎さんが夏の甲子園大会を観戦し、当時12歳の粲郎さんにあてて書いたものとみられる。郵送しないまま、手元に残したようだ。
昭和10年は市口さんが生まれた翌年。まだ出会っていないころの粲郎少年への絵はがきだった。「びっくりしたのと感動と……。子どものころ父親から大事に大事にされた、と聞いていたのを思い出しました」
粲郎さんは、地元・五條市の智弁学園の野球部を熱心に取材したという。たくさんの人たちが応援し、関わってきた甲子園。市口さんは「高校生の試合を見ていると、自分も一緒にがんばっているような気分になります」と話した。(宮崎亮)