中満泉さん(右)と国谷裕子さん。後方右は原爆ドーム=6日、広島市中区のおりづるタワー、伊藤進之介撮影
国連で7月に採択された核兵器禁止条約をめぐり、核保有国と非核保有国の間で溝が広がり、北朝鮮の核・ミサイル開発に危機感が強まっている。日本人女性として初めて国連軍縮部門のトップに就いた中満泉・国連事務次長(軍縮担当上級代表)は「安全保障上の危機にこそ、軍縮の機運は高まる」と語り、2018年にも30年ぶりとなる国連軍縮特別総会を開催する方向であることを明らかにした。広島、長崎の原爆の日の式典に参列した中満さんに、停滞する核軍縮を打開するための展望と、「SDGs(エスディージーズ〈持続可能な開発目標〉)」について、キャスターの国谷裕子さんが聞いた。
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〈国谷〉 原爆投下から72年、広島・長崎の被爆者の思いが核兵器禁止条約という形になった。人道的なメッセージが国際社会に伝わったように思われます。
〈中満〉 被爆者の方々は、思い出したくないような体験を、勇気を振り絞って世界中に発信した。それを122カ国の国連加盟国が受け止めて賛同した。人道的なメッセージは、核禁条約が採択された最も大きな要因だったと思います。
〈国谷〉 条約交渉の場や採択された議場で、そうした市民社会の熱気をどのように実感しましたか。
〈中満〉 昔は193カ国の政府代表が出てきて、条約ができる過程で市民社会の意見も参考のために聞きましょうというプロセスだった。今回は市民のみなさんがその場にいらっしゃった。将来的には、民間企業や研究者も入ってもらい、一緒に軍縮を考えていくことが、さらに必要になるでしょう。
〈国谷〉 日本は唯一の戦争被爆国として、核廃絶をずっと訴えてきました。道義的に高みにある国だと国際社会からみなされてきたけれども、条約に反対して交渉にすら加わらなかった。日本の位置づけは変わってしまいませんか。
〈中満〉 日本の「ブランド力…