六回裏阪神無死一塁、福留が右中間に2点本塁打を放つ=小林一茂撮影
(14日、プロ野球CS 阪神2―0DeNA)
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勝敗を分けた一球に至るまでには、投手と打者の間で、神経戦があった。
0―0の六回。阪神はこの試合、初めて先頭打者が出た。今季チーム最多の21盗塁を決めている糸井を一塁に置き、打席には福留。広く空いている一、二塁間を狙うのが、定石だ。
しかし、引っ張れる球が来ない。外角への速球二つで、カウントは1―1。ここでマウンドの井納が、牽制(けんせい)を2度挟んだ。次に投球しようとすると、福留はタイムをかけた。「自分のタイミングで、ということしか考えていなかった。短期決戦だし、どれだけ時間をかけてもいい」と言う。
ボール球を挟み、4球目も捕手は外に構えた。だが先取点を与えられない重圧もあるなか、リズムを狂わされた井納の147キロは、真ん中低めへ。4番打者は失投を逃さず、右中間席にたたき込んだ。「なかなか甲子園で『打った瞬間』というのはない。それほど感覚はよかった」と自賛する2ランは、駆け引きに勝った末に生まれた。
3年前と同じ光景を見ているようだった。
2014年、広島と甲子園で戦った第1S初戦。福留は六回に前田(現ドジャース)から、バックスクリーンにソロ本塁打を放った。チームは1―0で勝利。本人は当時のことを、六回の打席に入る前、ふと思い出したという。「価値ある一発を打った。いい思い出は、覚えているものです」。3年ぶりの最終Sへ、阪神がキャプテンの一打で王手をかけた。(井上翔太)