(14日、川崎3―2仙台)
前半にMF家長を退場で欠き、後半15分には0―2。多くがこのまま負けるだろう、と疑わなかった試合終盤に、わずか5分間で3点を挙げて川崎が逆転勝ちした。
この日J1通算400試合出場を達成した36歳のMF中村は興奮していた。これまでで最も印象深い試合を問われると、こう答えた。
「今回ですね。一生忘れませんよ、こんな試合」
後半37分、DFエウシーニョが決めた反撃のミドルシュートがチームを奮い立たせた。FW小林は「サッカーは1点で状況が変わる。あの瞬間、みんなの気持ちがよみがえった」。誰より、主将でもある小林の気持ちに火がついた。「こういう時に決めるのは、おれだ」
2分後、中央ペナルティーエリア手前から左足を振り抜き、同点ゴール。その3分後に放ったミドルシュートは、相手DFに当たって弧を描き、ゴール右隅に吸い込まれた。自己最多のシーズン17点目は、勝ち越し点に。試合終了後、ピッチに大の字になった。「いやー、しんどかった」
劣勢でも、粘り強くボールをつなぎ、最後まで戦い続ける川崎の愚直さは、まだ手にしていないJリーグ王者のタイトルへの渇望にある。鬼木監督は「諦めず、戦術を最後まで実行して勝てたのは、成長の証しだ」。残りは5節。首位鹿島との勝ち点差は5のまま、2位につける。追うチームに欠かせない勢いは、この日の奇跡の勝利で間違いなくついた。(菅沼遼)
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○鬼木監督(川) 「審判には納得いかないところもある。0―2でも諦めず、最後まで戦術を実行して勝てたのは選手の成長の証し。感謝している」
○中村(川) 「負け試合だし、負けたら(優勝争いは)終わっていた。タイトルへの思いが向こうの気持ちを上回った」