7月に名古屋市で行われた楽器の贈呈式。右端が宗次徳二さん(NPO法人イエロー・エンジェル提供)
第65回全日本吹奏楽コンクール(全日本吹奏楽連盟、朝日新聞社主催)の中学校と高校の部が21、22の両日、名古屋市熱田区の名古屋国際会議場で開かれる。大のクラシック音楽ファンで知られるカレーチェーン「CoCo壱番屋」創業者の宗次(むねつぐ)徳二さん(69)は毎年、愛知県内の小中高校へ楽器を贈り続け、吹奏楽部の活動を支えてきた。
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宗次さんは経営の一線から退くと、クラシック専門の「宗次ホール」を名古屋・栄の中心部に開業。2009年からは自ら設立したNPO法人「イエロー・エンジェル」を通じて、学校へ楽器を贈る取り組みを始めた。
当初は公募した個人に贈っていたが、愛知県内の公立中学の吹奏楽部の教員から「予算が足りなくて必要な楽器が買えない」という手紙を受け取り、希望を募って学校へ届けるように改めた。これまでに楽器など約1600点、計6億6千万円相当を寄贈。今年は7月、小学校と高校の計144校に約350点(1億円相当)を届けた。
宗次さんは「予算の制約で、必要な楽器が買えずに困っている吹奏楽部がたくさんある。行政ができないのなら、民間の出番。楽器を贈る運動が少しでも広がってほしい」と話す。
吹奏楽で使う楽器はどれも高価だ。一般的な相場はフルートやトランペットで30万~40万円、ユーフォニアムが60万円、テューバは80万~120万円ほど。ティンパニは一式で200万円という。
愛知県立豊橋東高校(豊橋市)吹奏楽部は今年、120万円相当のテューバを寄贈してもらった。部には備品が2本あるが、1本は購入から30年近く経過した古いモデルだという。顧問の伊東大喜教諭(30)は「何十年も前の古い楽器を修理しながら使っているのが現状で、どこの学校も事情は同じ。コンクールでは生徒たちに状態の良い楽器を吹かせてあげたい。寄贈を当たり前だと思ってはいけないが、本当にありがたい」と感謝する。
全日本吹奏楽コンクールが名古屋で開催されるようになってから、宗次さんは毎年のように会場に足を運び、演奏を見守ってきた。「若い学生が音楽に打ち込み、完全燃焼している姿を見ると元気をもらえる」。今年も、22日に開かれる高校の部を訪れる予定だ。(滝沢隆史)