人は「約束」をどのくらい守り続けることができるのだろう?湖北省恩施土家(トゥチャ)族苗(ミャオ)族自治州建始県三里郷大沙河村の村民・万其珍さんの答えは、「少なくとも4世代、150年」だ。人民網が報じた。
約140年前、万さんの祖父は一家を引き連れ、身一つで大沙河村まで逃れてきて、この地に移り住んだ。そんな万さん一家を当時、大沙河村の村民たちは親切に迎え入れただけでなく、救いの手を差し伸べ、万さん一家が村に根を下ろし、暮らせるようにしてくれたのだという。
船頭の万其珍さん(撮影・蘇璽)。
当時、水の流れの非常に速い大沙河を、村民らは粗末ないかだで渡っていた。そして、いかだが転覆することもよくあり、それで命を落とすこともあったという。万さんの祖父は、長江沿いに生まれ育ったため、泳ぎが得意なだけでなく、船を作ることもできた。そこで万さんの祖父は家で飼っていたブタ数頭を売って、小さな木の渡し船を作った。そして、料金を受け取ることなく、無償で、大沙河の両岸に住む村民を運んだ。そうして渡し船を漕いで一生を終えた万さんの祖父は亡くなる前、「万家が存続する限り、無償の渡し船を止めてはいけない」という遺言を残した。
その後、万さんの父親や叔父たちはその遺言に従い、現在まで渡し船を続けてきた。
渡し船を漕ぐ万其珍さん。(撮影・曾志強)。
1995年、当時50過ぎだった万さんは、叔父から渡し船の竿を譲り受け、万家の三代目船頭となった。それから約20年間、万さんは小さな石の小屋で船に乗る村民を待ち、毎日、船を数十往復漕いできた。川を渡る人が多い日は、万さんは、食事の時間もないほど忙しくなる。しかし、この約20年間、事故が起きたことは一度もなく、これは万さんにとって大いに誇りとなっている。万家は代々、無償で村民を渡し船に乗せてきたため、村民らは万家を非常に信頼し、高く評価している。
現在、万さんの息子・万芳権さんが渡し船の竿を譲り受け、万家の四代目船頭となっている。渡し船に乗る必要のある村民は現在ますます減ってはきているものの、万芳権さんは、「川を渡る必要がある人が一人でもいる限り、この船を漕ぎ続ける。そして、先祖がした約束を、代々守っていく」とその決意を語った。(編集KN)
「人民網日本語版」2020年9月2日