「病気腎移植」について条件付きで先進医療に認めること決めた厚生労働省の先進医療技術審査部会=東京・霞が関の厚労省
がんの治療で取り出した腎臓を、別の腎臓病患者に移植する「病気腎移植」について、厚生労働省の審査部会は19日、条件付きで先進医療として認めることを決めた。実施施設は治療の経過などを厚労省に報告せねばならず、国の仕組みのもとで実施される。安全や倫理面で批判されてきたが、入院費などに公的保険が使えるようになり、実績をつめば技術自体が公的保険の対象になりうる。
病気腎移植は、宇和島徳洲会病院(愛媛県宇和島市)などで万波誠医師(77)らが実施していたことが2006年にわかり、厚労省が監査に入った。患者の同意書がないケースもあった。関連学会が「安全性に問題あり」などと否定し、厚労省は臨床研究以外の実施を禁じた。
徳洲会(本部・東京)側は「移植する腎臓が不足し、患者のために必要」と、09年12月から16年5月の間に17例の臨床研究を実施し、16年6月に先進医療に申請した。腎臓に直径7センチ以下のがんがあり、がんの部分切除が難しく、全摘出に患者が同意した場合が対象。がんを取った腎臓を腎不全患者に移植する。4年で42例の計画で、移植後5年間の生存率やがんの発生がないかなどを調べる。
徳洲会は12年にも先進医療の申請をしたが、同年8月、提出資料では不十分として認められなかった経緯がある。
19日の部会では、説明文書や治療経過のチェック体制の整備が進み、安全性や妥当性に大きな問題はないとされた。腎臓の摘出が適切かどうかを検討する委員会に、泌尿器科や移植の関係学会の委員を入れることなどを条件とした。また移植した腎臓が機能しない例が4例出れば中止する。
移植手術をしてきた万波氏は部会の結果を受け、「(腎臓を提供する)ドナーが足りていない。先進医療として認められるのをきっかけにドナーが1人でも2人でも増えてくれるとうれしい」と話した。
【病気腎移植をめぐる主な経緯】
2006年10月 宇和島徳洲会病院で臓器売買事件が発覚
11月 同病院が病気腎移植の実施を発表、厚労省が監査開始
07年3月 日本移植学会など4学会、病気腎移植を否定する声明を発表
7月 厚労省、臨床研究以外での病気腎移植の実施を禁止
08年2月 議員連盟「修復腎移植を考える超党派の会」を結成
09年12月 徳洲会、臨床研究での再開を発表
12年6月 徳洲会、先進医療に認めるよう厚労省に申請
8月 厚労省の専門家会議(現審査部会)、先進医療に認めず
16年6月 徳洲会、先進医療に認めるよう再申請