ファッションショーの終了後、出演者や観客らが集まり、記念撮影をした=4日午後、東京都中央区の聖路加国際大学、池田良撮影
思春期や若い成人(AYA世代)のがん経験者がライトを浴びながら笑顔でステージへ――。聖路加国際大学(東京都中央区)の日野原ホールで4日に開かれた集まりで、そんな場面があった。
催しは、就職や結婚、出産、経済面など、若い患者の悩みや課題について社会の理解と支援を促そうと、若年性乳がん患者のサポート団体「Pink Ring」が企画。医師や患者による講演や意見交換に続き、ファッションショーを開催した。
軽快な音楽と、一人ひとりを紹介するアナウンスが流れる中、自ら選んだ衣装を着たがん経験者16人が次々とステージに現れ、拍手を浴びていた。ゲストとして、肺がんを経験したフットサル選手の久光重貴さん、乳がん経験者のモデル園田マイコさんも出演し、会場を盛り上げた。
再発した肺がんを治療中の岡山県倉敷市の会社員大森麻衣子さん(27)は「温かい雰囲気のなか、笑顔で歩けた。世代の近い多くのがん経験者と会えて、私も殻に閉じこもらず頑張ろうという気持ちになりました」と話した。
医学生だった27歳でユーイング肉腫の告知を受けた深川恵理さん(32)は聖路加国際病院で泌尿器科医として働く。ステージでは白衣を脱ぎ、赤いドレス姿を披露した。「治療から5年がたち、(現役の)患者からOBへと気持ちを切り替えようと思った。若い世代の仲間がいっぱいいて、うれしかった」と話した。
埼玉県草加市から参加した大橋枝理子さん(30)は1歳になる前にがんのため片目を摘出、26歳で横紋筋肉腫という別のがんを経験した。「病院で暗い色の服ばかり着ていたときに、鮮やかなワンピースの女性の姿に励まされた。いま闘っている人、これから闘う人の笑顔に少しでもつながればと思って参加しました」
スポーツウェアで登場し、片手で腕立て伏せを披露した軟部腫瘍(しゅよう)経験者の会社員鳥井大吾さん(28)は「ふくらはぎの筋肉や血管を摘出し、つらい時期もあったが、ジムに通って少しずつ体力を戻した。元気になった姿を見せたかった」と語った。
「Pink Ring」の御舩美絵代表(38)は「がんになってもそれぞれ人生を歩いている姿を、多くの人に見てもらう機会にしたかった。今日の一歩がみんなの次の一歩につながればと思います」と話した。(上野創、池田良)