根元に大きなこぶがある「姥杉」。今は一つだが、以前は乳房のように二つあった=北海道知内町元町
「姥杉(うばすぎ)」と呼ばれる樹齢約600年の古木が北海道知内町の知内公園内にある。近くの雷公(らいこう)神社の初代宮司の妻・玉之江(たまのえ)を葬った地に植えられたと伝わる。玉之江は、乳が出ない母親たちを助けてあげたいと遺言を残した。なるほど確かに、杉の根元には乳房そっくりの大きなこぶがある。
町郷土資料館の竹田聡学芸員(35)によると、乳不足に悩む母親が洗米を供え、こぶをさすりながら祈願し、その米をおかゆにして食べたところ乳が出た。人々から「乳神(ちちがみ)さま」「乳母杉(うばすぎ)さま」と敬われ、授乳や安産の神様として信仰されてきたという。
この姥杉を起源に始まったのが奇祭「十七夜講(じゅうしちやこう)」だ。男子禁制の通称「おっぱい祭り」は、天保年間(1830~44年)に始まったとされる。1月17日に雷公神社で催されるが、参加できるのは神主以外は女性のみ。毎年30人ほどが集まる。
女性たちはまず、乳房を模した、米で作ったシトギ2個を祭壇に供える。神主が参加者の名前を入れて祝詞(のりと)をあげ、おはらいをする。シトギにお神酒をかけて小さくちぎり、別に用意したハンバーグ形のシトギの上に乳首に見立てて載せ、参加者全員に配る。
「意外と霊験はあるかもしれま…