独自の分析で年間3億円以上の馬券を購入し、多いときで約2億円の利益を上げた男性。その外れ馬券の購入費は所得から控除できる「経費」にあたるのか。最高裁第二小法廷(菅野博之裁判長)は15日、長期間、大量の馬券を購入し続けている場合は「経費にあたる」と判断した。国税庁側の上告を退け、課税処分を取り消した二審・東京高裁判決が確定した。
問題になったのは、週末を利用して馬や騎手の特徴を独自に分析し、馬券を購入していた北海道の40代公務員男性のケース。2005年から6年間で約72億7千万円分を購入し、約5億7千万円の利益を得た。馬券代を経費として申告したが、外れ馬券は経費と認められずに計約1億9千万円を課税されたため、課税処分の取り消しを求めて12年に提訴した。
同様の訴訟で最高裁は15年3月、市販の専用ソフトを使い、中央競馬のほぼ全レースの馬券をネットで機械的に購入していた元会社員の裁判で「網羅的・継続的に大量購入した馬券は経費にあたる」と判断した。
第二小法廷は、この判断に沿い、年間3億~21億円程度の馬券を購入し、約1800万~約2億円の利益を上げてきた男性の購入方法は「営利目的の継続的な行為」と認定。「利益を得るためには外れ馬券の購入は避けられず、必要経費にあたる」と結論付けた。
15年5月の一審・東京地裁判決は「個別に判断して馬券を購入しており、一般的な競馬愛好家と質的に大きな差はない」とし、経費とは認めなかった。一方、昨年4月の二審・東京高裁判決は「独自のノウハウで長期間、多数回にわたって馬券を購入し、恒常的に多額の利益を上げた」として経費と認め、課税処分を取り消していた。
判決を受け、男性は弁護士を通じて「国民の皆さまには決して他人事とは思わず、国の姿勢に厳しい目をむけていただきたい」とコメント。国税庁は「国側の主張が認められなかったことは残念である」との談話を出した。(岡本玄)
■「最大の脅威は…