「犯行時の着衣」は事件から1年2カ月後の公判中にみそタンクから発見され、静岡地裁は再審決定の中で捜査機関による捏造(ねつぞう)の疑いも指摘した=静岡市清水区
1966年に旧清水市で一家4人が殺害された事件で死刑が確定し、静岡地裁の再審決定で釈放された袴田巌さん(81)の弁護団が今秋、地裁で採用されたDNA型鑑定を再現する実験を行った結果、7年半前にみそに漬けられた布の血痕からDNAを抽出できていたことがわかった。
弁護団が28日、取材に明らかにした。弁護団は「みそなどで汚れた試料からも、血液のDNAを抽出できることがはっきりした」と主張している。
静岡地裁が袴田さんの再審開始を決定し、釈放したのは3年9カ月前の14年3月。主な根拠となったのが、袴田さんの勤務先のみそ工場のタンクから発見された「犯行時の着衣」のシャツの血痕から、本田克也・筑波大教授が考案した「細胞選択的DNA抽出法」でDNA型鑑定し、袴田さんとは別人のDNA型が検出されたことだ。
だが、検察側は「手法が信用できない」などとして不服を申し立て、東京高裁で審理が続いてきた。
弁護団は今年9月、この「選択的抽出法」で、実際に弁護士がDNAの検出を試みる実験を実施。すべての血痕サンプルから検出できたという。この中に、袴田さんの支援団体が別の実験に用いるため約7年半前に血液を付着させた衣類をみそに漬け、保存していたものも含まれていた。
弁護団によると、実験の様子は定点カメラと手元を映すカメラを用いて一部始終を映像に記録。抽象的な「科学論争」が続く中、あえて「目で見て分かる方法」で証明を試みたという。映像は既に高裁に証拠提出されている。
2008年に静岡地裁に申し立てられた第2次再審請求の審理では、40年以上前にみそ漬けの状態で発見された衣類の血痕から、血液のDNAを抽出できるかがかぎとなっていた。
再現実験について弁護団は「本田教授の原理が正しく、慎重に審理を重ねた地裁決定が揺るぎないことが明らかになった」と主張。これに対し検察側は「第三者による実験ではないので信用できない」などと批判しているという。
■検察側学者、嘱託通り鑑…