立憲民主党が通常国会での提出を目指す「原発ゼロ基本法案」の骨子案が2日、わかった。原発再稼働は非常時以外に認めず、電力会社の廃炉支援や原発立地地域の雇用創出に国が責任を持つことが柱。原発再稼働を進める安倍政権との対立軸を示し、通常国会での争点にしたい考えだ。
小泉元首相が「原発ゼロ法案」 立憲と共闘実現?
特集:原発・エネルギー
昨秋の衆院選で野党第1党になった立憲が公約で「原発ゼロ」法策定を掲げ、自民党との立場の違いが鮮明になった。これまで民進党が態度を明確にしなかったため進まなかった原発ゼロに向けた国会論議が、ようやく本格化する。
骨子案では2030年までに10年と比べ、1年間の電力需要量を3割削減する省エネ目標と電力供給量に占める再生可能エネルギーの割合を4割以上にする目標を明記。原発新増設や使用済み核燃料の再処理、核燃料サイクルを全面的に禁止し、再稼働は石油が全く入ってこないような異常事態以外は認めないとした。
こうした基本方針を推進するため、首相を本部長とする「原発に依存しない社会を実現するための改革推進本部」(仮称)を設置。電力会社の廃炉や立地地域の雇用創出に国が責任を持つことを盛り込んだ。廃炉にする原発の国有化も選択肢として考えている。
「原発ゼロ法案」をめぐり、小泉純一郎元首相が顧問を務める民間団体「原発ゼロ・自然エネルギー推進連盟」も10日に独自の法案を発表する。立憲は骨子案をもとに同連盟などと意見を交わし、市民参加型で法案をまとめていく方針だ。
原発を保有する電力会社が原発用に確保している送電線の容量を開放しないことが再生可能エネルギー普及の妨げになっている現状もあり、立憲幹部は「まずは原発をやめる政治の方向性を示すことが大切だ」と話している。(南彰)
立憲民主党がまとめた「原発ゼロ基本法案」の骨子案の要旨は次の通り。
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第1 目的(略)
第2 基本理念
・電気の安定供給の確保を図りつつ、商用発電用原子炉を計画的かつ効率的に、全て廃止
・電気の需要量を減少させるとともに、電気の供給量に占める再生可能エネルギー電気の割合を増加
第3 国等の責務
・国は、これまで原子力政策を推進してきたことに伴う国の社会的な責任を踏まえ、原発に依存しない社会を実現するための改革を推進する責務を有する
・国は、改革に当たって生じ得る発電用原子炉設置者等の損失に適切に対処する責務を有する
第4 法制上の措置等
政府は、基本方針に基づく施策を実施するため必要な法制上、財政上、税制上または金融上の措置その他の措置を講じなければならない。法制上の措置は、法律施行後2年以内を目途
第5 基本方針
(1)発電用原子炉の廃止
1.政府は、速やかに全ての商用発電用原子炉廃止を目標とする
2.政府は次に掲げる措置を講ずる
①発電用原子炉を運転することができる期間の延長を認めない
②商用発電用原子炉の運転は、原子力以外のエネルギー源を最大限に活用してもなお電気の安定供給の確保に支障が生ずる場合で、かつ有効に機能する地域防災計画が作成されている場合に限る
③商用発電用原子炉の設置の許可及び増設を伴う変更の許可を新たに与えない
④廃止するための国の関与の在り方について検討
⑤使用済み燃料の再処理は行わない
⑥再生可能エネルギー、可燃性天然ガスその他の原子力以外のエネルギーの利用への転換を図るために必要な措置
⑦商用発電用原子炉等を廃止しようとする事業者に必要な支援
⑧立地地域における雇用機会の創出及び地域経済の健全な発展
⑨廃炉等に関する研究開発その他の先端的な研究開発の推進支援
(2)電気の需要量の削減及び再生可能エネルギー電気の利用の拡大
①1年間における電気の需要量について、2030年までに10年の100分の30に相当する量以上を減少させる
②30年までに1年間における電気の供給量に占める再生エネルギー電気の割合を4割以上とする
第6 推進計画(略)
第7 本部
内閣に首相を本部長とする「原子力発電に依存しない社会を実現するための改革推進本部(仮称)」を置く
第8 改革の推進を担う組織の在り方に関する検討(略)
第9 年次報告
政府は毎年、改革の実施状況に関する報告書を国会に提出