今年1月のXゲームズの表彰台で金メダルを首にかけられた平野歩夢
(14日、平昌五輪スノーボード男子ハーフパイプ)
スノーボード男子ハーフパイプの日程と結果
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特集:平昌オリンピック
命の危機を乗り越えて、五輪の舞台に平野歩夢(木下グループ)が帰ってきた。
昨年3月、米国で開催されていたプロ大会の試合中に空中でバランスを崩し、ハーフパイプの縁に落下。左ひざの靱帯(じんたい)と肝臓を損傷し、全治3カ月と診断された。医師からは「(落ちる場所が)あと1センチずれていたら、死んでいたかもしれない」と言われた。
スノーボード人生で初めての大きなけがに、「やってきたことが全て消えたかのように感じた。自分が折れそうになった」という。
それでも、弟の海祝(かいしゅう)さん(15)は、復帰に向けた平野の闘志を見ている。「リハビリ中、気づけば実家の自室でビデオを見て滑りのイメージを膨らませ、研究をしていた。全然落ち込んでなんかいなかった」。平野は言う。「動けない時に何をするか。人一倍考えられるこの時間を使って、『けがをしてよかった』と思えるようにならないといけないと思った」
再びスノーボードを履いたのは去年5月。最初は緩やかな小学生用の緩斜面を恐る恐る滑り出した。翌日には大きなジャンプ台でマットへ飛び始める。「すぐに高難度の技の練習を始めるようになって、本当にけがしていたのかなと思った」と海祝さんは振り返る。動けなかった間に膨らませていたイメージをどんどん形にしていった。
わずか4カ月後、復帰戦となった9月のワールドカップ(W杯)開幕戦で2位に食い込むと、第2戦からは2連勝。勢いを保って平昌入りした。「本当にここまで長かった。でも、けがした時間を無駄にしないように自分をプッシュさせてこられた」。逆境をバネに、19歳は高く飛ぶ。(吉永岳央)