ジャイアンツのエースとして長く活躍してきたリンスカム=USAトゥデー・ロイター
開幕まで約2週間に迫った大リーグ。大谷翔平が加入したエンゼルスに注目が集まるなか、同じア・リーグ西地区のレンジャーズにも、話題の選手がいる。
ジャイアンツで過去2度ナ・リーグのサイ・ヤング賞を獲得し、通算110勝を誇るティム・リンスカムだ。今月上旬、レンジャーズと1年100万ドル(約1億500万円)で契約した。最後の登板は、エンゼルスに所属した2016年8月にまでさかのぼる。
現在33歳。今季は長く実績をあげてきた先発ではなく、中継ぎに回る。大リーグ通算278試合のうち、救援は8試合しか経験がないが、AP通信などに「今の状態を考えれば、救援に回る方が得策。素晴らしい機会をもらえた」と前向きだ。
独特のフォーム、人気博した「ザ・フリーク」
2006年のドラフト1巡目(全体10番目)でジャイアンツと契約。07年に、150キロ台中盤の速球を武器に鮮烈デビューを飾った。08年、18勝を挙げてサイ・ヤング賞を獲得するなど、瞬く間にエースに登り詰めた。同年からは7年連続2桁勝利を挙げ、チームの3度のワールドシリーズ制覇にも貢献。胸を張り、体を大きく使って踏み込んで投げる独特のフォームや長髪姿、さらに「ザ・フリーク」(変わり者)というあだ名で人気を博した。
近年は球威が落ちたこともあり、球を動かして打ち取るスタイルに移行した。しかし、15年9月にでん部の手術を受けて以降、調子を取り戻せず、16年は9試合の登板で防御率9・16。シーズン途中にエンゼルスから戦力外通告を受けた。
「諦めたくなかった」
今年2月中旬にシアトル近郊で公開トライアウトを実施。約15球団のスカウトが見守るなか、投球練習を行い、契約につなげた。遅れてキャンプに合流したため、開幕に間に合うかは微妙だが、首脳陣もじっくりと調整させる方針だ。
かつての長髪はもうやめ、背番号も代名詞だった「55」ではなく、最近37歳で他界した兄がアマチュア時代につけた「44」に決めた。一時は引退も頭をよぎったが「まだやれると思った。諦めたくなかった」。約1年半ぶりのメジャーの舞台を心待ちにしている。(遠田寛生)