輸入車インプレッション@JAIA試乗会(下)
日本自動車輸入組合(JAIA)主催の輸入車試乗会が2月初旬、神奈川県大磯町であった。2日間にわたって記者が試乗した計12台のレビューを、「独断と偏見」による採点を交えて報告する。最終回のテーマは「お手軽な個性派ガイシャ」。輸入車が割安になり街に溶け込む一方で、優等生だが没個性なガイシャの増加を嘆くクルマ好きも少なくない。お手頃価格ながら強い個性を放つ、マニアックな4台を紹介する(金額はオプションを除いた税込み価格。星5つが満点)。
(上)非SUVという選択肢
(中)電気仕掛けのドイツ車たち
ルノー・メガーヌGT
前輪と一緒に後輪も舵(かじ)を切り、コーナリングや車線変更をスムーズにする「4WS」こと四輪操舵(そうだ)。1980~90年代の国産車でちょっとしたブームになったが、機構の複雑さによる高額化や操作フィールの不自然さが敬遠され、いつのまにか廃れた技術だ。2017年秋にルノーが国内投入した量販ハッチバックのメガーヌが、激戦区のCセグメントでの差別化を図って採り入れた。21世紀版4WSによるハンドリングは、スムーズかつ鋭い。小さい舵角(だかく)では前後輪が同位相に動くため、高速道路でレーンチェンジすると、車体が正面を向いたまま斜め前にスライドしたように錯覚する。荷重移動による横揺れは小さいが、振り子式に車両を傾けてカーブを進むJR九州の特急「ソニック」に乗車しているのに似た、不自然な感覚も付きまとう。スタイリングは、目ヂカラの強いライト類もアクの強さが抑えられ、シンプルで上質な印象。外装にゴテゴテした装飾が多くて賛否の分かれる日産車も、このデザインテイストを踏襲してほしい。(334万円)
【スタイリング】★★★★
【自然な運転感覚】★★
DS3ダークサイド
直訳すると「暗黒面」。仏シトロエンから独立した高級ブランド「DS」の特別仕様車だ。フランス車らしい大胆なネーミングとカラーリングが最大の特徴。ざらついた肌合いのツヤ消し黒のボディー表面には、ドアパネルなど一部にシボ加工が施される。ベース車両は、堅実でオーソドックスな小型ハッチバック。国内投入は2010年と古いが、熟成されてこなれた絶妙な乗り味はさすがフランス車。柔らかいがコシのあるシートや効きの良いブレーキなど、随所にしっかりした基本設計が垣間見える。暗くてキメの粗い画面の国内向け純正カーナビが許せるぐらい、良き相棒として長く付き合えそう。だがやはり、新設計の次期型が待ち遠しくもある。(303万円)
【大胆さ】★★★
【熟成度】★★★★
ルノー・トゥインゴGT(MT仕様)
独ダイムラーと日産三菱・ルノー連合との提携によって、スマートとプラットフォームを共用する。質素だが小粋なRRレイアウトは往年の欧州コンパクトカーの定番。その現代版とも呼ぶべきキビキビ走るトゥインゴに、ターボ過給と5MTを組み合わせたのだから楽しくないはずがない。スポーツグレードらしく、エンジン音やくぐもった排気音が背中から聞こえてくる。質素過ぎてタコメーターもないので、エンジンサウンドや加速感から変速タイミングを判断するしかない。根っからのクルマ好きやメカ好きが運転するのだろうだから、そんな不自由もまた楽しめるだろう。ただ、フットレストがないのはいただけない。足もとのスペースが狭いため、変速タイミングの前後にクラッチの上に左足を浮かせ続けなければならず、降りたら足首が痛くなっていた。マイカーにするなら、後付けパーツなどで改善したい。(229万円)
【操る楽しさ】★★★★★
【疲労軽減への配慮】★
スマート・ブラバス・フォーツー・テーラーメイド
もともとは、カジュアル時計メーカー「スウォッチ」とダイムラーによるマイクロカーブランドだった。2人乗りの「フォーツー」は、兄弟車のルノー・トゥインゴよりさらにホイールベースが短く、挙動はまるでゴーカートのような過敏さ。メルセデス車の高性能チューンで知られるブラバスが手がけただけに、甲高くてメカニカルなエンジン回転音が背中越しにブルブルと響いてくる。ダッシュボードからちょこんと生えているタコメーターと、その中に埋め込まれる一回り小さいアナログ時計の可愛らしいデザインは、スウォッチらしさが色濃い初代モデル譲り。さらに試乗車は、内外装のカラーコーディネートが自在なテーラーメイド仕様。紫色がかったレッドベリーのような赤色の外装に、ピンク色のステッチが入った白レザーのシートという組み合わせは、乗り手にも相応のファッションセンスが要求されそう。(297万円)
【ユニークさ】★★★★★
【敷居の低さ】★
(北林慎也)