宙組公演のレビュー「シトラスの風」で歌う星条海斗=滝沢美穂子撮影
専科スターの星条(せいじょう)海斗(かいと)が、入団から18年分の宝塚愛を胸に、宙(そら)組公演「天(そら)は赤い河のほとり」「シトラスの風―Sunrise」で存在感をみせている。23日に本拠地の宝塚大劇場に別れを告げ、東京宝塚劇場公演の千秋楽となる6月17日で退団する。
「宝塚は私にとって高校であり、大学であり、大学院。大好きで入ったけれど、今は愛してる。もうグッときちゃってます」。大劇場で公演中の3月末、取材にこう答えていた。
米国人の父を持ち、アメリカンスクール出身。2000年に入団し、ユーモアたっぷりの役もアクの強い役もものにしてきた。15年に月組から専科へ異動。昨夏の花組公演の後、退団を決意した。「宝塚で積み上げた星条海斗ではなく、まっさらな自分を見てもらいたくなった」という。
ちょうど、ハリウッドで演劇学を学んだ卒業生のワークショップに出る機会があり、演劇理論を学びたいという思いも強まった。今後の活動は未定。「女役になる想像がつかなくて」と笑う。
今作では宙組に初出演を果たした。「さわやかで前向きな組で感動した。宙組で卒業することになり、幸せです」。「天河」で演じている敵役の側近ウルヒはセリフが少なく、目の動きや表情が鍵となる。「心の声をどう表現するのか、やりがいのある役」と語る。
レビューは20年前の宙組誕生の際にも上演された「シトラスの風」。自身は音楽学校1年生で、大劇場の2階席の後ろから観劇してほれ込んだという。
さあ飛んでいけ――さえぎるものはない――。この歌詞に、歌劇の世界に飛び込んだ自分を重ねていた20年前と現在。「当時の自分が走馬灯のようによみがえって、泣いちゃった。今は自分が新しい世界に飛び立つんだなと、充実して毎日思えています」(尾崎千裕)