柴田理恵さんと愛犬の晴太郎。肩を組んだお気に入りの1枚だという(柴田さん提供)
俳優やタレントとして活躍する柴田理恵さんは、障害のある雑種犬と暮らしています。引き取るまでの葛藤や、犬と暮らして変化した夫婦の姿を語ってもらいました。
特集:どうぶつ新聞
――「晴太郎(はるたろう)」との出会いを教えてください。
晴太郎との出会いは、13年前。まだ残暑が厳しいある日、テレビ番組の撮影をしていた場所の近くで、「キャン、キャン」という鳴き声が聞こえたのです。近寄ってみると、テープでぐるぐる巻きになった木箱が捨てられていました。中には2匹の子犬がいて、そのうち1匹が「晴太郎」です。名前の一文字は、このときに一緒にお仕事をしていた、俳優の加藤晴彦くんからいただいたんです。
――そのときの様子は?
晴太郎には、先天性の障害があり、左の後ろ脚が、胴体にくっついていました。箱を開けた瞬間、もう1匹の犬はうれしそうに飛び出してきましたが、晴太郎は「ぼくはどうなるの?」とでも言いたげな目をして、じっとしていたのがすごく印象的でした。
ロケが終わってから、診察を引き受けてくれた動物病院に直行しましたが、「ひどい熱中症で、発見があと少しでも遅れていたら命が危なかった」と告げられ、そのまま入院させることになりました。あんな人気がないところに捨てるなんて、もし私たちが通らなかったらどうなっていたんだろう。想像するだけで、「本当にひどい」と涙が出そうでした。
――すぐ引き取ることにしたのですか。
幼い頃に実家で飼っていたこともあり、犬はとても好きだったのですが、仕事で家を空けがちな生活スタイルを考えるとすぐには決意ができませんでした。飲み歩くことも好きなので、ちゃんと散歩に行けるかなぁなんて心配もありましたしね。
ずっと気にはなっていたので、2週間に1度、ロケがある度に必ず動物病院へ寄っていました。私が行くと、すぐに駆け寄ってきてくれて。どんどんたくましく成長する姿に心が揺れていきました。最後には、夫と一緒に「できる限りのことを頑張ろう」という決意を固め、引き取りました。
――晴太郎と暮らしてみて、いかがでしたか?
障害があった左脚の手術などをしたため、そのケアをしてあげるのは大変でした。朝夕の散歩から帰ったら消毒をして、包帯を替えて。この処置に1時間ほどかかるので、忙しいときは必死でした。他にも、障害のためにおなかの調子を崩しやすい症状もあったので、「ちゃんとこの子を幸せにしてあげられているだろうか」と、慣れるまでは心配の連続でした。
――つらくはなかったですか?
大変だったけど、後悔などはまったくありません。帰ってきて出迎えてくれるとやっぱりうれしい。それに、晴太郎が私の生活をがらりと変えてくれました。
我が家に子どもはいませんが、晴太郎を通じ、夫婦のあり方が変わったんです。これまでは、2人の「個人」が一緒に生活している感じでしたが、晴太郎を中心に予定を組んだり、心配を共有したりすることで、「家族」になった気がしました。晴太郎が見ていると思うと、夫婦げんかもしなくなりましたね。
――もう13歳ですね。
だいぶ「おじいちゃん」になりました。いまは、筋力が衰えて歩けなくなったときに困らないよう、特注の車いすを作って装着する練習をしています。
――「最後まで責任を持つ」飼い方ができない人も多いようです。
これは本当に悲しいこと。動物が寿命を全うするまで一緒にいられないなら、飼ってはいけないと思います。
いま、ペットショップで気軽に動物を買える時代。ペットショップの中には、高齢の方に赤ちゃん犬やかなりの運動量を必要とする犬種を売ってしまうケースもあると聞きます。そんなの、お互いに幸せじゃないですよね。
「命」を取り扱っている以上、売る方も飼う方も、きちんとした知識が必要だと声を大にして言いたいです。(聞き手・中井なつみ)
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しばた・りえ 1959年、富山県生まれ。タレント、俳優として幅広い番組や舞台に出演。夫、犬2匹と暮らす。