和歌山東戦の五回、バックスクリーン左にソロ本塁打を放つ智弁和歌山の林=6日、紀三井寺
高校野球の春季和歌山県大会は6日、準々決勝があり、今春の選抜で準優勝した智弁和歌山が和歌山東を10―3で下した。これで、上位4校に与えられる今夏の和歌山大会のシード権を確保。3季連続の甲子園出場に向け、手応えをつかむ一戦となった。
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智弁和歌山打線に対する他校のマークは厳しい。強打を印象づけた選抜後は、なおさらだ。この日も、和歌山東の先発・杉本禎輝(3年)は、「甘いところは一発がある。厳しいところを狙った」。内へ、外へ、ギリギリのコースを突いた。
ただ、警戒する相手への対応を、智弁はわかっていた。際どいボール球に誘われないこと。1点リードの三回、四球を足がかりに好機を作ると、中軸も打てないボールをきっちり見極めた。計4四球。押し出し四球などで2点を追加した。
その攻撃を見て、ベンチの古宮克人部長は納得の表情だった。主将だった2007年、第88回全国選手権準決勝ではサヨナラの押し出し四球を選び、帝京に13―12で競り勝った経験がある。「野球は打つだけじゃない」。さらに、こうも考えていた。「勝負してもらえないなら、勝負せざるを得ない状況を作ればいい」
そんな場面が、3点リードの五回2死で来た。打席には、選抜でも活躍し、注目を集めた左打者の3番林晃汰(3年)。一度も振らず、3ボール1ストライクに。5球目、外角の直球をとらえる。白球はバックスクリーン左へ消えた。
三回の失点が脳裏にある杉本としては、ストライクを取りたい場面。制球の狂いは「内へボール半個分」だったが、林はそのわずかな隙を見逃さなかった。「打てる球は限られている。それは選抜でも経験しているので」。春の公式戦3試合連発となる高校通算41本目のアーチをかけた。
林と同じように好球必打を貫いた打線は、17安打で10得点。三振はわずか一つだった。高嶋仁監督は「もうちょっと前半に点を取ってほしかった」と不服そうだったが、強打は着実に磨かれている。(小俣勇貴)