VAR制度は3人組が基本。主審と連絡を取るVARが真ん中に座り、手前がアシスタント。奥は、適切な動画を探すリプレーオペレーター
6月14日に開幕するサッカーのワールドカップ(W杯)ロシア大会で、ビデオアシスタントレフェリー(VAR)制度が初めて採用される。試合の中継映像を使い、試合の結果を左右するような重大なミスを見逃さないようにする試みだ。国内でも30日の国際親善試合日本―ガーナ戦で初めて使われ、Jリーグでも2020年の導入を検討し、テストが始まっている。
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VAR制度の対象となるのは「得点」「PK」「一発退場」「(退場、警告などの)人定」の4項目。最少の干渉で、最大の利益を得ることが目的で、なるべく試合の進行を妨げないようにする。明らかなミスを正すためで、リプレーで3回以上、確認しなければならないような難しい判定のプレーは対象にならないという。
VAR制度は、主審と連絡を取るVARとそのアシスタント、判定に必要な動画を選び出すオペレーターの3人が基本的な枠組み。VARやアシスタントは、特別な研修を受けた審判か経験者が担当する。W杯でもVARの数は1人だが、確認できる映像が増えるため、アシスタントやオペレーターの数が増える見込みだという。
試合では、アシスタントが試合全体を見て誤審をチェック。疑わしい場面がある場合にVARに伝える。VARの指示の下、オペレーターが判定に必要な映像を選び出し、VARに見せる。VARが誤審があったと判断した場合、主審に伝える。これが大まかな流れだ。
W杯ブラジル大会で導入されたゴールラインテクノロジーは独自のカメラの設置が必要となる一方、試合の中継の映像を使うため、コスト面で比較的、導入のハードルが低いとされる。
Jリーグは18~19年に検証実験を行い、20年に導入するかを決める。すでに4月28日の横浜マ―鹿島戦を含むJ1の4試合で実験を行った。4試合のうちに、VARが主審に映像を見るよう求めたのは1回だけだったという。
試合の流れを止めるのではないか。そんな懸念はまだ残る。ただ、各国で行われた1千試合のテストによると、VARが主審に映像のチェックを要請したのは、3試合に1回に過ぎない。チェックする時間も55秒で、CKやGKではそれぞれプレー再開まで4、5分もかかることを考えればそれほど影響がないとみられる。
JリーグでVARを担当する黒田卓志フットボール本部長は「シミュレーションやラフプレーも映像でばれてしまう。選手のプレーがフェアになるのではないか。マラドーナの神の手はもう起こりえません」と語った。(河野正樹)