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海に捨てられた甲子園の土 長島三奈さんがたどった球史

作者:佚名  来源:asahi.com   更新:2018-6-22 10:18:41  点击:  切换到繁體中文

 

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当時の写真を見ながら思い出を語る山口さんら=沖縄県立博物館・美術館、琉球朝日放送提供


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第100回を迎える全国高校野球選手権大会。100の思いをつなぐ始球式リレーが23日、全国の地方大会に先駆けて沖縄で幕を開ける。沖縄の球児が初めて甲子園の土を踏んだのは、本土復帰前の1958年。スポーツキャスターの長島三奈さんが当時選手だった金城睦俊さん(77)=三塁手=と山口辰次さん(78)=左翼手=から聞いたのは、沖縄の球児たちの甲子園への強い思いだ。


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圧倒された甲子園


長島さん 自分たちが初めて甲子園の扉を開いたというのは、どんな思いでしたか。


金城さん 試合も緊張したんですが、入場式の方が観衆も多くて、すごく緊張しましたね。足も地につかないような状態で。


山口さん あのときはそうですね、甲子園球場の中に入って圧倒されましたよね。それだけでおじけ付いちゃったよね。


金城さん 入場行進の前に「おい、左の足からな」なんて打ち合わせたけど、結局、どうやって行進したか覚えていないね。


長島さん 沖縄代表って本当にのびのび楽しそうにプレーされている選手たち、チームが多いんですが、元祖はやっぱり首里高校。


山口さん 私たちは緊張して。守備についていると、大きな声でスタンドから声がするんですよ。「おいレフト、もっと後ろに行け!」とかね。


長島さん アルプスから指示が出たんですか?


山口さん それくらい野球がわかっていないと思われていたんでしょうね。まあ、土が盛られているマウンドを見るのも初めてでしたからね。見るもの聞くものすべて初めて。


金城さん (甲子園に)行く前から本土とのレベル差は皆、認めていましたから。結局どれだけ善戦できるか。そういう気持ちはありましたね。


甲子園の土で痛感した「現実」


長島さん 惜しくも敦賀(福井)に惜敗しました。土はどういう気持ちで。


金城さん 沖縄から初めてでもあるし、一生の思い出として持ち帰ろうと。お世話になった方々にも、ということで、みんなで持ち帰りました。


山口さん スパイクの袋やバットケースに入れてね。


長島さん でも、持ち帰れなかった?


山口さん もうすぐ沖縄の港に着くというところで、税関だか、検疫官だかが来て、「(甲子園の)土を持って帰ってきたでしょう。それを出しなさい」と。え、どうしてと言ったら「これは持って上陸できないんだ」と。そう言って没収をされたわけです。


長島さん 本当にびっくりされたんじゃないですか。


金城さん 全く法律もわからない。キャプテンや監督の言うがままに出しました。


土の行方、翌日の新聞で知った


長島さん せっかく持ち帰ったのに。


山口さん 気分が沈んでいるところに、翌日海に捨てられている写真が新聞に載っていたんです。本当にがっかりした。「いや~これひどいよ」と。沖縄は県なんだけど外国扱い。それを思い知った出来事でした。あのあと、「土でダメなら焼き物を」っていうことで兵庫県の陶芸家の方が甲子園の土で焼いた皿を各選手にくださったんです。


長島さん 土で焼いたお皿も甲子園の石も、日本全国の皆さんが首里の選手たちのためを思って、愛にあふれていますね。


山口さん そうですね。本当にうれしかったです。これは私にとって宝物です。


60年かけて「普通」になった


長島さん それから半世紀、興南高校がついに夏の優勝旗を手にしました。


山口さん 今の(沖縄の)子たち、本当に強くなりましたよね。


金城さん 我々の頃は1勝するのが夢でしたから。それが優勝しちゃうんだから。体格も技術も、環境も本土の子たちに全く劣らない。本土の子たちと同じスタートラインにたって野球が出来ますよね。


長島さん 夏の高校野球は今年100回。金城さん、山口さんたち沖縄球児が出場してから60年です。何か思うことはありますか?


山口さん 私たちが残念な思いをした土も、今では普通に持ち帰れますよね。「普通」なのがいいんです。僕らの時は「異常」だったのが「普通」になった。この60年はそんな60年だったんじゃないかな。


金城さん 戦争で出られなかった時代も含めて積み重ねだよね。僕らが出場してから60年たって状況は変わった。けど、同じ高校野球の球児ですから、連帯感みたいなものはありますね。甲子園に出られたことは今でも誇りです。



この企画は、琉球朝日放送(QAB)の協力で実現しました。(構成・佐藤岳史)


インタビュー後記


せっかく持って帰ってきた甲子園の土が海に捨てられた。そんな切ないこともまっすぐ受け止めるなんて、謙遜しているけれど、当時の沖縄球児は大人だったんだな、強い信念を持っていたんだなと感じました。


当時、この出来事のニュースで沖縄の状況を知った人もいたんじゃないか。甲子園は時代を映す鏡なんだと思います。


私が高校野球を取材し始めて今年でちょうど20年。感謝や思いやり、全力を尽くすことなど、球児たちとの出会いが私を成長させてくれました。100回目の今年も、これからも、高校野球のつながりはずっと続いていくんだと思います。(長島三奈さん)




 

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