待ち合わせ場所に、ど派手なバイクと衣装で登場したアブドゥライ・チャムさん=入尾野篤彦撮影
ワールドカップ(W杯)ロシア大会で、日本が対戦する各国はいずれも国際サッカー連盟(FIFA)ランキングで格上だ。しかも24日に対戦するセネガルは、熱狂的なサポーターに加え、何やら怪しい黒魔術も代表チームを後押しするという……。
100人は死んでいた…セネガルサッカー史に残る事件
【特集】2018ワールドカップ
2018ワールドカップの日程・結果
「ライオン」が愛称のセネガル代表チーム。サポーターの愛称も「12番目のライオン」だ。
良くも悪くも注目される存在の中で、特に有名なのが、アブドゥライ・チャムさん(67)だという。
自宅に取材に行くと、赤・黄・緑というセネガルの国旗の色にペイントした派手なバイクで登場した。着ている服や帽子もセネガル色でそろっている。
自宅に入れてもらうと、応援時に持参するライオンのぬいぐるみと太鼓を手に取り、ラッパを吹き鳴らした。
スタジアムでは応援に熱中する。「ほとんど試合は見ていない」という徹底ぶりだそうだ。
元は郵便配達員で、アマチュアのサッカー選手だった。1986年からスタンドの盛り上げ役を務め、「マスコット」と呼ばれるように。W杯初出場だった02年の日韓大会の時には日本も訪れた。今では見知らぬ人から声をかけられたり、ガソリン代や病院代が無料になったりと、役得もあるんだとか。
日本戦の予想スコアを聞いてみると、「2対0。いや3点か。まあ2対0でいいだろう」とニヤリ。日本人の前でなければ、もっと大差を予想していたかもしれない。
セネガルでの取材中、会う人会う人に日本戦の予想スコアを尋ねてみた。運良く取材できたスポーツ大臣を含め、日本が勝つ(セネガルが負ける)と予想した人は1人もいなかった。
セネガル代表は初出場の日韓大会で旋風を巻き起こした。初戦で前回覇者のフランスを破り、その勢いのまま8強入り。代表チームの躍進に、国全体のサッカー熱が高まった。
現在の代表監督は日韓大会で主将だったアリウ・シセ氏。エースストライカーのマネ選手(リバプール)や、守備の要のクリバリ選手(ナポリ)ら、代表選手の大半は欧州リーグの一線でプレーする。日本にとって厄介なチームであることは間違いない。
「黒魔術」ほんとにある?
さらにセネガルでは、「ジュジュ」と呼ばれる、古くから信じられている黒魔術があるという。詳しい内容は明かされなかったが、卵やひょうたんを用いるなどして試合の相手側に呪いをかけるという。
国内ではレスリングやアマチュアサッカーの試合で広く用いられてきたという。昨年には、サッカーの20歳以下代表の試合でもセネガルの選手が対戦相手のザンビアのゴール内にジュジュを置いたとして、物議を醸した。
日本戦で使われてはたまらない。地元メディアのアダマ・カンデ記者にその効果を聞いてみた。すると「よく聞くけれど、個人的にはあまり信じていない」と笑った。
「効果があるなら、とっくの昔にセネガルや他のアフリカのチームがW杯で優勝しているだろう?」
さて、ジュジュは日本戦のスタジアムでも用いられるのだろうか?(石原孝)