コロンビア戦で指示を飛ばすGK川島永嗣(中央)=2018年6月19日、ロシア・サランスク、長島一浩撮影
サッカー・ワールドカップ(W杯)ロシア大会で、日本のゴールを守る川島永嗣(35)。日本人GKとしては異例となる長期にわたり、海外でプレーしてきた。その背景には、6カ国語を操る語学力がある。語学の重要性を痛感し、後進の育成にも力を入れている。
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1次リーグのポーランド戦で決定的なピンチを何度も救った川島。8年前、J1川崎でプレーしながら海外移籍を模索していた。川島のマネジメント会社代表の田中隆祐さん(43)は海外エージェントとの交渉に同席し、こんなやりとりをした。
「その日本人のGKは何カ国語しゃべれるんだ?」
「英語にスペイン語、イタリア語もいけます」
2010年のW杯南アフリカ大会後、川島はベルギーのリールスに移籍を果たした。念願の移籍は、陰の努力のたまものだった。プロ入り後にイタリアへ留学し、語学の大切さを実感した川島。その後はJリーグ時代から、練習後に語学のレッスンを続けていた。特にGKは味方への指示が重視されるポジション。「あの時、『日本語しか話せません』と答えていたら、移籍はあり得なかったかもしれない」と田中さんは振り返る。
川島を間近で見てきた田中さんは、語学力のなさが日本人の海外進出を阻んでいると感じる。11年、川島らを発起人として「第2の川島」を育てる取り組み「グローバル・アスリート・プロジェクト」を始めた。海外を目指す選手への無料での英語の教材提供。サッカーやスキー、ラグビーなど46競技で240人以上が利用してきた。
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さらに4年前に始めたのが「英語サッカースクール」。3歳から小学生までを対象にサッカーを通して、英語を教える。「サッカー教室ではなく、サッカーを使った英語教室です」と田中さん。異質なコンセプトに人気が広がり、スクールは首都圏で18校にまで拡大している。
「あらゆるフィールドで、グローバルな人材を日本から育てたい。川島はそのロールモデルなんです」。W杯の大舞台で活躍する川島を見て、世界を志す若者が増えることを願っている。次の対戦相手、ベルギーは、川島が初めて海外でプレーした国。「とても感慨深い。川島らしいプレーを見せてもらいたい」(高野遼)