自殺は個人の心の問題だと言われています。でも平成という時代は、自殺の増え過ぎが経済と関係しているかも、と気づかせてくれました。追い込まれる理由は経営難、過労、パワハラ、社内いじめ……。これは、やっぱり、とことん、経済の問題です。(編集委員・中島隆)
連載「平成経済」
5月14日、東京・霞が関にあるホールに、若手の弁護士たちが集まっていた。平成という時代を企業再建にかけてきた、魂の弁護士の講演がこれから、始まる。
男が壇上に立った。
村松謙一さん、64歳。
少し早口で、村松さんは語りかけた。
「倒産は人の命を奪うことがあります。だから、どんな会社でも救わなくてはなりません。その役目を担えるのが弁護士です」
村松さんは、経営者が最後にすがる「中小企業のラストホープ」。200を超える企業を救ってきた。
2001年12月にあった参議院の財政金融委員会に、村松さんは参考人として呼ばれた。政府や政治家は、不良債権処理を急げ、急げと大合唱中。でも、村松さんは訴えた。
「この1年で、リストラ、不良債権処理に当たっての倒産で貴重な命をなくされた方々が3600人から4千人、家族が後を追うこともあります」
そのころ、村松さんは弁護士廃業も考えていた。助けようとしていた社長が、村松さんに遺書を残して自死。さらに、入院中だった自身の長女が15歳で亡くなった。続けざまの死に、心は折れかかっていた。
議員が質問してきた。
「企業を100%再建したら産業の構造転換ができない」
村松さんは答…