(25日、高校野球群馬大会 前橋育英6―5健大高崎)
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健大高崎の三塁手・高山遼太郎(3年)の頭上を打球が抜ける。ジャンプしても届かない。「それろ」と祈ったが、判定はフェア。サヨナラの走者が横を駆け抜ける。「どうしようもない」。もう夏が終わる瞬間を眺めるしかなかった。
試合後、両親への感謝を語るほどに目が潤む高山だったが、笑みがあふれ出す瞬間があった。記録員の遠藤匠真(たくま、3年)について話す時だ。「教室だとちょっと影が薄い。でも野球だと本当に明るいやつです」
遠藤は今年3月、肩のけがで学生コーチに転向。同じ頃、高山も外野から内野に移ったが、守備が不安材料だった。
「ちょっとノック打ってくれない?」。春も近いある日、高山が遠藤を朝の自主練に誘った。誘うたび必ず来てくれる遠藤だったが、そのうち何も言わなくても、早起きして朝練に付き合ってくれるようになった。「朝、遠藤がいるのが当たり前なんです」
平日は毎朝グラウンドで待ち合わせ。そして2人で1時間ノックやティーバッティングをこなす。遠藤の「まあ、いけんだろ」という適当な褒め方も、高山の自信になった。
2人の朝練を始めた今春から、高山は急成長を見せた。本塁打を量産。強打者の山下航汰(3年)も「高山の打球の飛距離はまねできない」と話す。今大会はチームトップの10打点の活躍。その理由に高山は「遠藤がいたから」と繰り返し、笑顔を見せた。
試合後のベンチ裏で遠藤は話した。「朝練で高山がたくさん打つのを見るのが楽しかった。高山は今日の負けから、もっと上を目指せるはずです」
今日の結果は満足とは言えないけれど、今、2人が見つめるのはプロの夢だ。
高山は「明日から練習再開です。遠藤がいいなら、手伝ってもらおうかな。そのかわり、お金持ちになったらたくさん飯をおごります」と笑う。2人の野球は終わらない。(山崎輝史、丹野宗丈)