西日本豪雨では、住宅を購入したばかりの人も浸水被害に遭った。不動産取引では、契約前の「重要事項説明」が義務づけられているが、豪雨による浸水リスクは項目に入っていない。深刻な浸水被害があった岡山県倉敷市では、「契約時に知っておきたかった」と悔やむ住民の声が聞かれた。
西日本豪雨
西日本豪雨支援通信
「危険性を知っていたら、結果は違ったかもしれない……」。約2年前に同市真備町尾崎で自宅を新築した会社員の男性(31)はそう語る。自宅の2階まで浸水。家族は無事だったが、テレビや家具類は全て使えなくなった。
ハザードマップは、住み始めてから広報で見た記憶があるが、内容はよく覚えていない。「家の購入を真剣に考えているときに教えてほしかった。知っていれば、補償を手厚くした保険に入り、家具の置き方も違ったと思う」
重要事項説明の項目は、宅地建物取引業法に基づいて定められている。たとえば津波被害や土砂災害が想定される土地かどうかは、説明が義務づけられている。一方、河川の氾濫(はんらん)による浸水リスクは、現状では項目に入っていない。
岡山県宅地建物取引業協会の大森明彦副会長は「ハザードマップの配布に取り組んでいるが、法的な縛りはなく対応に差は出てしまう」と話す。「浸水で亡くなった方も多く、今後、重要事項に加えることも必要かもしれない」。宅建業法を所管する国土交通省によると、今のところ浸水リスクを加える検討はしていないという。(野中良祐)