70年間苦しめられてきたのは、誰の責任なのか――。旧優生保護法に基づく強制不妊手術の被害者を救済するための法案が14日、まとまった。だが、被害者たちが繰り返し訴えてきた国の責任はあいまいなままで、怒りの声は静まらない。
強制不妊の救済法案で合意 被害者の理解は得られぬまま
救済法案が与野党の国会議員から出たことを受け、被害弁護団が東京都内で会見を開いた。会場には、初めて被害者が提訴した1年余前から使い続けている「国は謝罪と補償を」と書かれた横断幕。共同代表の新里宏二弁護士は「予想よりも早く救済法案が出たことは評価できるが、一時金の額など、内容は被害の重大性と向き合っているとは思えない」と訴えた。
被害を巡っては、これまで札幌や仙台、東京、大阪、熊本など7地域で20人の原告が提訴し、それぞれ慰謝料など1100万~3850万円を国に求めている。
新里弁護士は、「子どもを生み、育てるという決定権を侵害されているのに、一時金320万円という額は被害回復とはならない」と指摘。「これまで被害者に裁判をさせないように補償制度を求めてきた。けれど不十分な制度では、被害者は裁判を選ばないといけない」とし、「被害の重大性に向き合った補償額にすべきで、真の被害回復を強く求めたい」と話す。
被害者・家族の会共同代表でもあり、不妊手術を強いられたとして国を提訴している東京都の男性(75)も同席。「私は60年間苦しめられてきた。国は悪かったことを認め、謝って欲しい」と述べた。
一時金への批判は各地で相次いだ。
「臭いものにふたをするためか」。不妊手術の被害を訴え、全国で初めて国家賠償請求訴訟を仙台地裁に起こした宮城県内の60代の女性原告の義姉は、憤りを隠さない。
知的障害のある女性は15歳で不妊手術を強制されたとして、慰謝料など計1100万円を支払うよう国に求めている。
一時金の額は、国が被害の重さや謝罪についてどう受け止めているのかを反映している、と義姉は感じている。国がハンセン病の元患者らに最大1400万円の補償金を支給したことを考えれば、「障害者を見下しているとしか思えない。納得がいかない」と言う。
訴訟は早ければ3月20日にも結審する見通しだ。判決を待たずに一時金の額を固めたことについて、「これ以上の提訴を阻止するための救済法では意味がない。被害者は国の法律で人権を奪われ、体以上に心を傷つけられた。被害者や専門家の声に、国はもっと耳を傾けてほしい」と訴える。
札幌市北区の小島喜久夫さん(…