「高校野球史上最高の試合」と言われる甲子園の名試合で、数々のドラマが含まれた1979年夏の箕島―星稜(石川)戦。この試合を「かたり」で再現するイベント(朝日新聞和歌山総局など主催)が11日、和歌山県有田市箕島の有田市民会館紀文ホールであった。当時の選手たちも駆けつけて試合の裏話を披露した。
甲子園ベストゲーム
スポーツの名シーンをマイク1本で再現する話芸「かたり」をしているタレントの山田雅人さん(57)が登壇。当時のメンバーで、箕島の主将・上野山善久さん、エース・石井毅さん(現姓名・木村竹志)、星稜の主将・山下靖さん、一塁手・加藤直樹さんが客席にいるなか、試合について語り出した。
1―1で入った延長戦。延長十二回と十六回、ともに2死走者なしから箕島に飛び出した起死回生の同点本塁打を、選手や監督の会話を交えて語った。「2度の奇跡が起きました」
延長十六回、おたふく風邪で体調の優れない上野山さんが二塁ゴロを後逸した場面を、「あの名手がなんと!」と紹介。捕れば試合終了という邪飛を星稜の加藤さんがつまずいて捕れなかった場面では「加藤さん、おまたせしました」と会場の笑いを誘った。
星稜のエース・堅田外司昭さんが今は甲子園で審判をしていること、石井さんが今も子どもたちに野球を教えていることも紹介し、「この試合はみんなの人生を、運命を、変えた。あきらめない心が込められているんです」と結んだ。
その後のトークライブでは、山田さんを司会に、箕島と星稜のOB4人が試合を振り返った。
二塁ゴロの後逸を「言っておきますけど、そんな簡単なゴロじゃなかった」と言う上野山さんに対し、石井さんは「あれはイージーなバウンドだったな」と笑いながら話した。
箕島が2死から放った2本の本塁打について、星稜の加藤さんは「実は、僕も本塁打狙ってました」と打ち明け、山下さんも「僕にも本塁打狙えと伝令が来てました」と話し、対抗心を燃やしていた。
会場には箕島の野球部員約40人の姿も。上野山さんは「戦い合った星稜の方たちがいたから、野球史に残る試合ができた。みんなも頑張っていただきたい」と壇上から部員たちにエールを送り、山下さんも「私たちにも夢がある。甲子園で、現役の箕島―星稜戦を見たい」と話した。箕島の尾坐原岳斗主将(2年)は終了後の取材に「練習をしてきたという自信があるからこそ、あきらめない心が生まれると思った」と語った。(大森浩志郎)