甲子園最多勝監督の高嶋仁さん(72)が選抜大会を観戦しました。
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甲子園大会をバックネット裏から観戦しています。珍しいことやないんです。ぼくは自分の学校が出た時も出なかった時も、時間があれば、甲子園に来て試合を見てました。これはええカードやと思うと、見ないと気がすまん。ええ選手がおると聞いたら、この目で確かめたくなるんです。
高校野球の監督の中でも一番の甲子園好きやないかと、自分で思ってます。こればかりは、今後も変わらんでしょうね。
開会式はNHKテレビの放送席から見させてもらいました。監督にとっては一番うれしい時間でしょう。これまでの苦労が報われた。選手もよう頑張ったな。そんな気持ちになります。年とってからは、どうも目元がゆるんできたのか、涙が出てくる。そんな姿をアップで映されたら困るから、ここ数年は外野席でこっそり見てました。
高校球児にとって、これ以上の舞台はありません。勝っても負けても、活躍してもしなくても、色んなことを教えてくれます。どうせやったら、勝たんと、おもしろくない。思い切ってプレーして欲しいです。
市和歌山は市和歌山商だった時代から、守りのしっかりしたチームでした。その伝統が真鍋忠嗣・元監督から半田真一監督へと受け継がれています。
半田監督はああ見えて、なかなかしつこいんです。和歌山県では11月に監督の研修会がある。懇親会になると、必ずぼくの後ろの席に座って話を聞いとる。席を替われと言われても、気づくと、また戻ってきている。ぼくは大体、ベテラン監督たちとあれこれ話してますから、何かをつかもうと思うんでしょうね。その結果、試合で痛い目にあわされたこともあります。
ただ、今日は開幕試合の緊張感があるのか、ちょっとよそ行きの野球をしてしまいましたね。走ったり、エンドランをかけたり、もっと思い切ったことができるチームのはずです。岩本真之介投手がこんだけ素晴らしい投球をしたんやから、九回で終わらなあかん試合です。七、八回にうまく追加点をとれなかった。2回戦はもっと思い切った野球をして欲しいです。
岩本投手は球速も上がり、昨秋よりさらに成長しています。守備陣も試合が進むにつれ、落ち着いて本来の動きが見られるようになりました。2回戦が楽しみです。
第2日からもテレビやラジオのゲスト解説をやらせてもらいます。慣れないことですが、楽しみでもあります。なにより、今年も甲子園の試合を見られる。幸せなことやと思ってます。(智弁和歌山・前監督)
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たかしま・ひとし 智弁和歌山監督として甲子園に夏23回、春12回出場し、夏2度、春1度の優勝を果たす。智弁学園(奈良)時代も含めた甲子園通算68勝は歴代最多。昨夏の第100回全国高校野球選手権記念大会を最後に勇退し、名誉監督に。1946年、長崎県の五島列島出身。72歳。自身は海星(長崎)2、3年時に夏の甲子園に出場した。日本体育大学卒。環太平洋大学体育学部特任教授。