来年3月に欧州連合(EU)を離脱する英国について、EUのバルニエ首席交渉官は29日、離脱後の英国との「過去にない協力関係」を提案する意向を示した。英側が求める「離脱後もEUと特別な関係を維持する」ことに理解を示したと受け取られ、外国為替市場で英ポンドが買われ、対ドルで約3週間ぶりに1ポンド=1・3ドル台となった。
バルニエ氏はベルリンでドイツのマース外相と会談後、記者会見して発言した。ただし、「過去にない協力関係」の具体的な内容は明らかにせず、実現できるかは不透明だ。
一方で、人、モノ、資本、サービスの移動が自由であるEUの単一市場を「尊重しなければならない」と強調。単一市場での貿易のメリットを受け続けながら、EUからの人の移動を制限しようとしている英国を牽制(けんせい)した。
英国のEU離脱交渉では、離脱後の両者の関係に加え、英領北アイルランドと陸続きのEU加盟国であるアイルランドとの国境管理が焦点になっている。これまで交渉は難航しており、交渉期限の今年秋までに何も決められないまま英国が離脱する懸念も高まっている。(ブリュッセル=津阪直樹)