リオデジャネイロ五輪体操女子代表の宮川紗江選手(18)が、日本体操協会の塚原千恵子・女子強化本部長(71)らから「パワーハラスメントを受けた」と29日の記者会見で主張した問題で、同協会は30日、緊急対策会議を開き、協会と利害関係のない弁護士らからなる第三者委員会を立ち上げて、調査することを決めた。
対策会議後、協会の具志堅幸司副会長が報道陣の取材に応じ、「宮川選手の記者会見で初めてパワハラの話を聞き、大変驚いた。早急に解決しないといけない」と話した。カタール・ドーハでの世界選手権が始まる10月下旬までに調査を終え、公表する方針だ。
宮川選手の所属チームのコーチだった速見佑斗氏は今月15日、宮川選手への暴力行為を理由に協会から無期限の登録抹消処分を受けた。宮川選手は29日の記者会見で、速見コーチから顔をたたかれたり髪の毛を引っ張られたりする暴力をかつて受けていたことを認めたうえで、「速見コーチと一緒に東京五輪で金メダルを取るのが夢」と述べて、処分の軽減を訴えた。
また、暴力問題とは別にパワハラを受けたと主張。日本女子代表チームの監督でもある塚原千恵子強化本部長と、夫で協会副会長の光男氏(70)から、「あのコーチはダメ。だからあなたは伸びない。私なら速見の100倍教えられる」などと言われて、恐怖を感じたという。
リオ五輪後の2016年11月、協会は年間を通じて国内外での合宿に参加する「2020東京五輪特別強化選手」制度を立ち上げたが、強化方針が具体的でないとの理由で宮川選手は参加しなかった。すると千恵子氏から「参加しないと協会として協力できなくなる。五輪にも出られなくなるわよ」と言われたと、宮川選手は主張し、「権力を使った暴力だと感じる。これらのパワハラの事実を認めていただきたい」と訴えた。
30日の対策会議には、塚原夫妻は出席しなかった。光男氏は30日夜、朝日新聞の取材に対し、「自分が指導者になってから44年間、ずっと選手のためを思って指導や発言をしてきた。宮川選手に対しても、もちろんそれは同じ。もしその思いが伝わらなかったとしたら残念だ。調査には全面的に協力したい」と述べた。
第三者委は、宮川選手や塚原夫妻から直接話を聞いて調査を進める。調査の過程で今回の件以外のパワハラや暴力などの問題が持ち上がれば、それを含めて調査したいという。具志堅副会長は「全部の膿(うみ)を出して、東京五輪に向けて新しく出発したい」と話した。(平井隆介)
■「潰されてしまうのではな…