5月にあった体操のNHK杯を腰のケガで棄権し、世界選手権(10月、ドイツ)の代表を逃した村上茉愛(日体ク)が東京五輪へ向けて再出発する。22日から始まる全日本種目別選手権に跳馬で出場する。NHK杯直後には「体操から離れたい」とすら思った村上を奮い立たせた、メッセージがある。
「ゆっくり治して、頑張ろう」。村上にそんなメッセージが届いたのは、6月上旬のことだ。送り主は体操界の「キング」こと、内村航平(リンガーハット)だった。
村上は目標とする体操選手に「内村航平さん」と名を挙げる。そんな先輩からの激励に「ただうれしかった。日本のために頑張らなきゃいけない」と感じた。「必死に治して頑張ります」と返信を送った。
このやりとりは、8日の体操協会の理事会の直後にあった。理事会では、NHK杯を棄権した村上を「特例」で世界選手権代表に選べないか話し合われたが、否決された。村上としては「自分でケガをしたので、覚悟はできていた」と切り替えられてはいたが、内村からの連絡で「自分は一人じゃない」と強く感じることができたという。
日本女子はまだ、東京五輪の団体出場権を獲得できていない。世界選手権で上位9カ国以内に入ることが条件のため、「代表メンバーの手伝いをしたり応援したり、できることはしたい。あとはテレビで見ることになる。(獲得を)願うのみです」。
ケガを機に股関節や肩甲骨などの使い方を一から見直し、力に頼らず体を操る練習に取り組んでいる。世界選手権に出られない悔しさは、「東京五輪に向けてガツガツ練習できる」という前向きな気持ちが打ち消してくれる。(山口史朗)