ウクライナ東部で4年にわたり、政府軍と親ロシア派武装勢力との対立が続いている。事態の打開を図る関係国の動きは停滞し、忘れられた紛争とも呼ばれるが、今も断続的に起きる砲撃に市民の生活が脅かされている。
「すべてを失ってしまった。寂しい……」
がれきとなった自宅前でアンドレイさん(18)がつぶやいた。
ウクライナ東部のトロイツク。親ロシア派支配地域との境界線から約1キロの地点だ。日本ユニセフ協会の視察に同行、6月下旬に防弾車で現地に入った。
アンドレイさんの自宅は、「地雷」と書かれた立て札が両脇に立つ細い道の先、小麦畑や牧草地が広がる村の一角にあった。
5月18日未明、親ロシア派支配地域からとみられる迫撃砲弾が直撃した。43歳の父と13歳の弟は即死。母は重傷。アンドレイさんも背中と足にけがをし、退院したばかりだった。
4人が寝ていた部屋は天井に穴が開き、かろうじてソファが原形をとどめる。周囲はコンクリートの塊が山積みになっていた。アンドレイさんはスマートフォンの写真を見せてくれた。「父と弟はそっくりだったんだ」
学校を武装勢力が占拠
境界線近くの街にあるマリンカ第2学校は、校舎の全ての窓に、爆風などでけがをしないよう土囊(どのう)を積み上げていた。日本の小学1年から高校2年にあたる生徒167人が学ぶ。
ルドミラ・パンチェンコ校長(…