欧州連合(EU)の行政執行機関である欧州委員会は21日、イタリアがEUの財政規律に違反しているとして、制裁発動に向けた手続きに入ることが妥当だと判断した。イタリアが財政赤字を見込む2019年予算案の修正に応じないためで、EU加盟国の了解が得られれば、正式に手続きを始める。
伊首相、予算案を修正せず 欧州委が財政規律違反を指摘
イタリア国債急落 新政権の財政悪化、懸念
「イタリア経済の不確実さが増しており、これまで同国が経済の安定に向けて進めてきた歩みを弱体化させかねない」。ドムブロフスキス欧州委員会副委員長(金融担当)は21日、予算案の修正に応じないイタリアの姿勢に懸念を示した。
欧州委は今後、加盟国の財務相による閣僚理事会に制裁手続き開始を勧告する予定。来年1月に開かれる理事会で開始が決定し、イタリアが期限内に適切な措置を講じなかった場合には制裁が発動される。実際に財政赤字を理由に制裁が発動されれば、EUの発足以来初めてとなる。
実質国内総生産(GDP)比で0・2%相当の制裁金が科されるほか、EUからの投資予算の一部が凍結される。制裁金は最大でGDP比0・5%相当まで引き上げられる。
イタリアでは6月、EU懐疑派の連立政権が発足。失業者などに一定額を支給する「最低所得保障」など巨額の財源が必要な政策を掲げる。1・5%の経済成長を見込み、歳出削減や国有財産の売却などでまかなうとしたが、19年の予算案では財政赤字をGDP比で最大2・4%と想定した。
10月に予算案を受け取った欧州委はイタリアに再三、財政赤字の幅を縮めるよう求めてきた。EUの財政規律のルールに照らして、赤字を減らすペースが遅すぎるとの判断だが、イタリア側は「国民との約束だ」と応じなかった。
欧州委にとっては、イタリアの…