36年にわたりスペインで独裁を敷いたフランコ総統の墓の扱いが波紋を広げている。首相が墓の移設を決めたところ、議論が噴出。同じ施設に眠る内戦犠牲者の扱いも未解決だ。自国の歴史に向き合うスペイン社会の苦悩が垣間見える。(マドリード=疋田多揚)
深い緑の山の中腹に、高さ150メートルの巨大な白い十字架がそびえている。マドリードから北西に50キロ。1959年に完成した慰霊施設「戦没者の谷」だ。岩山をくりぬいた奥行き260メートルの聖堂がある。内戦に勝利したフランコ総統の命令で造られた。
内戦犠牲者3万人以上が眠るが、中心にあるのはフランコ自身の墓だ。兵士の巨像、聖書を題材にした巨大絵画などの装飾があふれている。
サンチェス首相は8月、「未来…