長崎への原爆投下時に、国が定める被爆地域の外にいた「被爆体験者」161人が、長崎県と長崎市に被爆者健康手帳の交付などを求めた訴訟の控訴審判決が10日、福岡高裁であった。矢尾渉裁判長は、10人に手帳の交付を命じた一審・長崎地裁判決を取り消し、全員の手帳交付を認めない判断を示した。
被爆者は今、核兵器と人類の関係は…核といのちを考える
被爆体験者の集団訴訟第2陣で、原告は原爆投下時に爆心地から約7・5~12キロにいた。原告のうち16人は今年7月の結審までに死亡、遺族が訴訟を引き継いでいた。一審と同様、原告が被爆者援護法で定める「被爆者」に当たるかが主な争点だった。
2016年2月の一審判決は、世界保健機関(WHO)の報告書などに基づき、自然に浴びる放射線の世界平均(年間2・4ミリシーベルト)の10倍超に当たる年間25ミリシーベルト以上の被曝(ひばく)で健康被害が生じる可能性があると判断した。
その上で終戦直後の米国調査団による報告書を基に、原告それぞれの被曝線量を推計した医師の意見書を採用。旧長崎市の東側にあった旧矢上村、旧戸石村にいた原告10人について、原爆投下後1年間の被曝線量の推計値が25ミリシーベルトを超えていると認め、被爆者に当たると結論付けた。県や市、棄却された原告151人が控訴していた。
控訴審で原告側は「年間1ミリ…