国際ボクシング連盟(IBF)フライ級15位の坂本真宏(27)=六島=が12月31日、マカオで王者のモルティ・ムザラネ(南アフリカ)に挑戦する。大阪市大院に在学中の現役大学院生でもある坂本は、世界王者になる夢とともに、ある願いをかなえるために戦う。
世界戦に向けて下半身、特に踏ん張る力を強化してきた。11月中はトレーナーを乗せた自転車に重しをつけ、後ろを押して坂道を駆け上がった。マカオで戦う準備を着々と進めている。
堺市で生まれ、泉北高時代にキックボクシングジムに通ったことで格闘技に興味を持った。大阪市大工学部に進学してボクシング部に入部。人と殴り合った経験はなく、ケンカといえば「一個上の兄とやるくらい。争いごとを避けて生きてきた」。だからこそ拳を思い切りぶつけられる「非日常の世界」にのめり込んだ。
大学時代には大きな実績はなかったが、部を引退後の4年時にプロデビュー。右ストレートを武器に2015年に全日本新人王に輝いた。ここまでの戦績は13勝(9KO)1敗。現在は工学研究科修士課程の2年。来年4月、機械設計会社への就職でボクサー生活に区切りをつけるつもりだった。
転機は昨夏。唯一の敗戦を喫した木村翔(青木)が、五輪2連覇という中国の英雄を敵地で倒して世界王者になった。「プロとしてやりきりたい」という思いに火がついた。就職の内定を辞退するなど退路を断って取り組み、世界挑戦のチャンスをつかんだ。
願いがある。大阪市大のボクシング部は、部員が減ってこのままでは廃部が濃厚だ。「僕の活躍で1人でも2人でも入りたいという子が出てくれば部が続くと思う」
あとは学業とスポーツの両立を分かりやすく世間に見せることだ。自身は「一日中部屋にこもる必要のない研究室だった」といい、自分の裁量で効率的に勉強でき、ボクシングの時間もつくれた。減量中は脳が働かないように感じ、「数式を解くのに苦労した」と笑うが、「世界王者になることで、どちらも真剣にやれば両立できることを証明できる」と5日の記者会見で強調した。まずは拳で王座を勝ち取る。そして将来はロボット開発に携わるという夢を描く。(有田憲一)