2008年のリーマン・ショックでは、「内定切り」や「派遣切り」などの形で多くの若者が職を奪われた。それから10年。就職内定率が上向くなど、若者の雇用環境は改善しているかにみえる。だが、正社員とは名ばかりの不当な働かせ方も横行している。
「正社員なんて肩書だけで、会社は守ってくれないことを身をもって知りました」。埼玉県の男性(32)はリーマン・ショック後の10年の会社人生を振り返り、そう話す。
就職活動をしたのはリーマンの翌年の09年度。いちどは大手不動産会社の内定を得たが、市況の冷え込みを理由に取り消された。その後、50社以上の試験を受け、卒業直前に内定が出たのがインターネット回線の訪問販売を手がける創業3年の会社だった。
「全員正社員雇用」。求人情報にあった言葉に引かれたが、仕事は過酷だった。提示された労働条件は「勤務時間 午前7時~午後10時」「月給18万円 残業代・賞与なし」。実際は顧客のクレーム処理に忙殺され、終業時間が翌日になることも頻繁にあった。
それでも耐えたのは「大変だっ…