87歳になっても、脳内では「ニューロン」と呼ばれる神経細胞が新しく生まれていた。そんな研究成果を、スペインのマドリード大の研究チームが、米医学誌ネイチャー・メディシンに発表した。
脳内で情報をやりとりするニューロンは胎児のころにネットワークが作られるが、大人になった後でも新しくニューロンが生まれるかどうかは議論が続いている。3月には英科学誌ネイチャーに、大人になると神経細胞はほとんど生まれないという論文が掲載されていた。
研究チームは今回、43~87歳の13人の遺体から、脳の器官で記憶などをつかさどる「海馬」を調べた。いずれも生前の医療記録から脳や神経の異常は確認されなかった。
13人を調べた結果、加齢とともにスピードは遅くなるものの、87歳でも未成熟のニューロンが多く生まれているのが見つかり、成熟していく様子が確認できたという。これまでの研究との違いは「脳組織の保存や観察するまでの処理方法が影響しているのだろう」と研究チームは話している。
一方、アルツハイマー型認知症と診断された52~97歳の45人の海馬についても調べた。すると病気の進行とともに新しく生まれるニューロンが急減していた。初期症状でさえ、その影響が見られた。研究チームは「アルツハイマーと加齢が脳に与える影響はそれぞれ別のものだと考えられる」と指摘している。
研究成果は、3月25日付のネイチャー・メディシン(
https://doi.org/10.1038/s41591-019-0375-9
)で読める。