かつて東欧共産圏の独裁体制を経験した旧ユーゴスラビアのボスニア・ヘルツェゴビナで、昨年3月に起きた息子の変死事件に対する公正な捜査を求める父親がいる。その訴えは、政治腐敗に沈黙してきた市民に届いて改革を求めるうねりを生み、欧州連合(EU)も動かしている。
事件は昨年3月中旬、同国北西部バニャルカで起きた。大学生でラップ歌手のダビドさん(当時21)が行方不明になり、飲食店などで働く父親のダボル・ドラギチェビッチさん(49)は6日後に警察の死亡通知を受けた。地元の警察部門の幹部と検視官は通知と並行し、異例の会見で「民家に侵入後、下水路に飛び込んで事故により死亡した」と説明。ダビドさんが薬物中毒だったと発表した。
ダビドさんは生前、3年ほど前…