3月末に予定される英国の欧州連合(EU)からの離脱をめぐり、英国のメイ首相は20日、離脱条件でEU側の譲歩を引き出すため、ブリュッセルでユンケル欧州委員長と会談した。だが、EU側は英側が求める譲歩に応じる姿勢はみせず、溝は埋まらなかった。両者は月内に再度、協議することで一致した。
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会談では、離脱後に英領北アイルランドとEU加盟国アイルランドの間で物理的な国境を復活させないための「非常措置」について議論した。会談後に発表された共同声明では、非常措置は「一時的な性格のもの」としたが、期限や英国側が一方的に破棄できるかどうかには触れなかった。今回も具体的な歩み寄りの策は見いだせなかった。
英・EUは離脱に当たって、アイルランド島内に目に見える形で国境を復活させないことで一致しているが、具体策は見つかっていない。昨年11月に英・EUが合意した離脱協定案には、具体策が見つからなかった場合の「非常措置」を盛り込み、北アイルランドにEUと同等の規制を適用し、国境管理を不要にするとした。
だが、その後、英議会は「EUのルールに永続的に縛られる」などとして協定案の承認を拒否。英側は非常措置について期限を明示したり、英国が一方的に破棄できたりするよう求めている。EU側は、「北アイルランドの平和を脅かす」などとして非常措置の規定の変更を一貫して拒否している。
離脱まで30日余りと迫るなかで、事態はほとんど進展していない。何の取り決めもないまま離脱日を迎え、英国とEUの関係が急激に変わることで、経済や市民生活に大きな混乱が出る恐れが高まっている。(ブリュッセル=津阪直樹)