3月末に欧州連合(EU)からの離脱を予定する英国で、EU加盟国からの入国者から出国者を差し引いた純流入数(推計)が、離脱を決めた2016年の国民投票時の3割に落ち込んだ。過去10年で最少レベルとなり、EU市民の英国離れが際立っている。
先月28日の英国家統計局の発表によると、昨年9月までの1年間のEU市民の純流入は5万7千人。国民投票のあった16年6月までの1年間の18万9千人から7割も落ち込んだ。中東欧からは、流入数より出国数が多かったという。
専門家らは、英国離れの原因として、国民投票の後にポンドの価値が下がり、他のEU加盟国に比べて英国で働く魅力が落ちたことや、離脱の行方が見通せない不安などを挙げている。英国の農業やサービス業などの現場では、比較的賃金が低く負担の重い仕事をEU市民が担ってきた面がある。こうした現場では既に労働者の確保が難しくなったとの声が上がっている。
離脱支持者からはEU移民への不満が強く、メイ政権はEU離脱後、技能の低い労働者の流入を制限する方針を示している。
一方、EU以外の国々からの流入はすでに英政府が制限できるが、純流入数は26万1千人となり、過去15年で最多となった。中国やインドからの留学生が増えていることなどが理由という。(ロンドン=下司佳代子)