21世紀枠で出場の石岡一(茨城)が25日、春夏通じて初の甲子園に挑んだ。農学校が母体の県立高で、部員の約4割が園芸科、造園科といった農業系学科で学ぶ。昨夏旋風を起こした金足農(秋田)をほうふつさせるチームは奮闘したが、「カナノウ」の再現はならなかった。延長十一回の末、盛岡大付(岩手)に敗れた。
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エースの岩本大地君(3年)は、自宅の植木の手入れをしていた祖父を手伝っていた経験から、造園科で学ぶ。「植木の剪定(せんてい)は5メートルくらいのはしごに乗ってやるので、集中力が高まる。ピッチングでも初回から終盤まで集中です」
この日は立ち上がりから4連続奪三振の快投、170球を投げ抜いた。造園技能検定3級を2年時に取得。将来の夢はプロ野球選手だが、より難関の2級を目指して実習に励む。
岩本君とバッテリーを組む捕手の中山颯太君(2年)も造園科。「雑草を抜くなど、低い姿勢での作業が多く、足の筋力が鍛えられた」と話す。甲子園では岩本君を巧みにリード、低めの球もうまくさばいた。
内野手の干場(ほしば)聖斗君(2年)は園芸科。「手先を使う細かい作業が多いので、送球時にボールを離す瞬間まで神経を集中させるようになりました」
石岡市は、ナシ、ブドウ、イチゴ、ミカンなどの果物や米、有機野菜の栽培が盛んな地域だ。野球部は近隣の農家から米や卵、旬の果物の差し入れを受けながら、体をつくり、力をつけてきた。
週に2度ある実習では学校から約4キロ離れた農場でネギ、レタス、トウモロコシなどの野菜を種から育てる。マネジャー3人のうち2人も農業系学科。自分たちが育てた野菜で豚汁やカレーを選手のために作ることもあるという。
金足農の存在は部員も気になっていた。「同じ農業系で、躍進する姿は刺激になった」と口をそろえていう。エースを全員でもり立てる戦い方も同じだ。
岩本君は昨夏以降、吉田輝星投手(現・日本ハム)の投球フォームを手本にしてきた。身長は174センチで、吉田投手とほぼ同じ。得意な球種も似通う。
「今は比べられるのは照れるし、恥ずかしい。『輝星2世』と言われても恥ずかしくないくらいがんばって、いつかは(吉田投手を)超えたい」という。悔しい敗戦となったが「全力でやった。甲子園で試合した経験を無駄にしたくない。成長してまた戻ってきます」と夏での雪辱を期した。(高井里佳子)