(25日、選抜高校野球 盛岡大付3―2石岡一)
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マウンドの少し手前で、石岡一のエース・岩本は片ひざをついたまま動けなかった。
「最後の最後に……。焦ってしまった」。同点の延長十一回。2四球と失策で1死満塁のピンチを背負った。フルカウント。もう、ボール球も許されない。170球目。内角の142キロで詰まらせる。目の前にボテボテの打球が転がってきた。「よし、併殺だ」。だが、捕手への送球は大きくそれた。初の甲子園はサヨナラ負けに終わった。
勝利まで、あと一歩だった。球速170キロのマシン打撃で練習を積む盛岡大付に対し、緩いカーブ、スライダーを交えて手玉に取った。八回まで2安打無失点、11奪三振。野手陣も泥臭く守り、アウトを取るたびにガッツポーズ。しかし、九回2死二、三塁。2球連続スライダーで空振りを奪った後、決め球の内角直球を右前にはじき返され、追いつかれた。
同点打の球と幕切れとなった球。岩本が選んだのはいずれも直球だった。相手が直球に強いのは感じ取っていたが、「最後は一番自信のある真っすぐで抑えたかった。甘くなったけれど、力負けです」。最速147キロのエースのプライドだった。
21世紀枠での初出場。学校は普通科のほかに造園科、園芸科がある県立高で、実習があるため全員がそろっての練習は週に1回ほどだ。それでも、強打の相手を最後まで苦しめた。岩本は言う。「自分たちもやれるんだって思った。もっと成長して甲子園で勝てる投手になりたい」。少しの自信と詰めの甘さを胸に、借りは夏に返す。(山口裕起)
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●川井監督(石) 「同点にされてから打ち急いでしまった。悔しさもあるが、子どもたちにのびのびとやらせるということは達成できたかな」