26日から始まる男子プロバスケットボールBリーグのチャンピオンシップ(CS)にシーホース三河がいない。レギュラーシーズン最高勝率だった昨季から、移籍でチームリーダーの橋本竜馬(現琉球)と日本代表の比江島慎(まこと)(現栃木)が退団。穴を埋めきれずに苦しんだ中で、次の核となる若手に経験を積ませ、復活に向けて種をまいたシーズンとなった。
連勝なら自力でCS進出を決められた最終節の川崎戦で連敗。1点差で落とした4月19日の第1戦は善戦した。厳しい防御で篠山竜青(りゅうせい)、辻直人、ニック・ファジーカスら日本代表3人を擁する川崎の攻撃を抑え、第1クオーター(Q)は22―14。第2Qで得点が止まって同点に追い上げられ、けがの退場者がいながらも最後まで競り合った。1点を追う第4Q残り2秒、逆転を狙った3点シュートが外れた。
「勝てましたよね」と金丸晃輔。橋本、比江島とともに数年かけて強い三河を作り上げたシューターは振り返った。「チームプレーが徹底されていないので、シュートが入っている時間帯はいいが、そうでない時はだめで、立て直しがきかない。そういうチームでは、とてもじゃないけど優勝は狙えない」。勝ちきれず、B1中地区4位に沈んだ。
PG(ポイントガード)の橋本は流れを読んで指示を出し、PG・SG(シューティングガード)の比江島は苦しい場面で得点できた。鈴木貴美一ヘッドコーチ(HC)は「PGとSGはチームの心臓部ですから。そこが変わって苦しんだ」。だが、「そこが成長してくれた」と続けた。シーズン終盤に先発で起用したPG熊谷航、PG・SG岡田侑大(ゆうた)のことだ。
昨年12月に加入した熊谷は大東大を昨季の学生日本一に導いた22歳の司令塔。同11月に入った岡田は、拓大を中退してプロになった20歳だ。京都・東山高3年時にウィンターカップで準優勝し、大学でも1年から活躍して関東リーグ優勝。少しでも早く長くプロとしてプレーしたいという思いで飛び込んできた。
逸材には違いないが、Bリーグにシーズン途中で加わったばかりの“学生”を2人も先発起用し続けることを「ギャンブル」と鈴木HCは表現した。「前からいる選手を起用したら、ぎりぎりCSに出られたかもしれない。だが、若い2人を育てないとチームが先に進まない」と批判覚悟で決断した。惜敗した川崎戦でも長くプレーさせ、「ここで使わないと何も残らない。そういう意味では期待に応えてくれた」と話した。
2人そろって先発した最後の14試合は7勝7敗。岡田は「千葉とか上位には何もできなかった。だが、Bリーグがだいたい分かった。体力もバスケットIQも足りないので改善したい」と手応えと課題を挙げ、熊谷は「若い僕らは勢いを与えることはできても経験がぜんぜん足りない。練習からすごく勉強になる」と学ぶ意欲にあふれる。金丸は「強気なところはいいが、もっとチームで戦う意識が必要。練習で何度も言って教えることになると思う」。
Bリーグとなる前には天皇杯9度、国内のトップリーグを6度制した就任25季目の鈴木HCは、今季を「15年前と似ている」という。三河の前身アイシンがリーグ戦で1度だけプレーオフに出られなかった時のことだ。当時も中核選手が2人抜けた。1季は苦しんだが、その後、天皇杯4連覇などと復活した。その再現へ若い2人をどれだけ伸ばせるのか。名将の手腕が試される。(松本行弘)