英国のメイ政権は14日、欧州連合(EU)からの秩序立った離脱に必要となる法案を6月第1週に議会に提出すると発表した。この法案を可決・成立させた上で今夏までに離脱を実現したい考えだが、過半数の支持を得るのは厳しい情勢だ。
この「離脱協定法」は、離脱の条件を定め、英国とEUが合意した協定案の内容を英国内で履行するのに必要な協定批准手続きの一つだ。ただ、肝心の協定案自体は、既に3回否決されている。離脱協定法案の採決でも、協定案の中身の是非が問われることに変わりはなく、可決はハードルが高いとみられる。
メイ政権は、離脱協定法案は議員による修正の余地があるため、議会の理解が得やすいと期待しているようだが、苦し紛れの「奇策」といえそうだ。
13日夜には、議会での合意形成に向け、メイ首相と最大野党・労働党のコービン党首が協議した。首相官邸の報道官は「協議は有益で建設的だった」としたが、EU関税同盟から抜けたいメイ政権と、残りたい労働党の溝は埋まらず、進展はなかった模様だ。
英国は当初、3月29日に離脱する予定だったが、英議会の意見がまとまらず、最長10月末まで延期された。メイ首相は、離脱協定の批准を終わらせて早く離脱し、5月23~26日の欧州議会選に参加せずに済ませたい考えだったが、混乱収拾のめどはたたず、選挙参加は避けられなくなっている。(ロンドン=下司佳代子)