「我が国の人工呼吸器はどこに行ったのか」。新型コロナウイルスによる肺炎の状況が深刻化する米国・ニューヨーク州の知事は24日の記者会見で、人工呼吸器の深刻な不足状況を訴えた。英国やイタリアなどの欧州諸国でも同じように人工呼吸器が最も不足した感染対策物資の一つとなっている。「環球時報」が伝えた。
世界のニーズが中国に向かう
患者の肺の中に液体成分がたまり血液に酸素を供給できなくなると、人工呼吸器が極めて重要な救命機器になる。北京思瑞徳医療器械有限公司の崔剛・臨床ディレクターは、「世界トップレベルの人工呼吸器メーカーにはドイツのドレーゲル、スウェーデンのゲティンゲがあり、二流レベルブランドには米国のメドトロニック、スイスのハミルトン、米国のGEヘルスケア、米国のバイエアメディカル、ドイツのソフィー、中国の邁瑞医療などがある。これ以外はおしなべて三流レベルになる。中国国産の人工呼吸器は今はまだほとんどが二流・三流レベルにとどまっている」と述べた。
世界ハイレベルの人工呼吸器の生産地の1つである米国は、新型肺炎の襲来で人工呼吸器不足がますます深刻化している。米紙「ニューヨーク・タイムズ」が23日に掲載した米医療専門家の論考によると、新型肺炎について初めて大規模な調査研究を行ったところ、患者で集中治療室(ICU)に入る必要がある人は5%、人工呼吸器が必要な人は2.3%だった。米国で今後3ヶ月間に数百万人が新たに感染するとみられ、必要な人工呼吸器の台数は算出できる。現在、ニューヨーク州には6千台があるが、クオモ知事はこのほど同州では2万5千台が不足していると明らかにした。米国集中治療学会(SCCM)の推計では、全米では新型肺炎の患者96万人に人工呼吸器が必要になる見込みだが、現在米国内には約20万台しかないという。
感染状況が深刻な英国でも人工呼吸器が不足する。ジョンソン首相は先週、英国の各業界に人工呼吸器3万台の製造に協力してほしいと呼びかけた。英国民保健サービス(NHS)の提携医療機関には現在、使用できる人工呼吸器が8千台しかない。新型肺炎の致死率が最も高いイタリアでは、人工呼吸器の不足が深刻で医師は患者を選択して治療せざるを得なくなった。
危急存亡の秋に、世界の巨大な人工呼吸器ニーズが中国企業に押し寄せている。北京誼安医療システム股フン有限公司(フンはにんべんに分)の生産ラインは全力を尽くして海外からの注文に応えている。同社の会長補佐は取材に対し、「現在、イタリア、英国、モンゴル、ロシアなど35ヶ国・地域から注文があり、すでに1千台近くを輸出し、数千台が生産スケジュールに入っている」と述べた。中国の工業・情報化部(省)によると、「3月3日までに、国内の重点モニタリング企業は湖北省に非侵襲的な人工呼吸器約1万4千台と侵襲的な人工呼吸器約2900台を提供した」という。ブルームバーグの業界研究アナリストは、「関連工場が3月に武漢市に提供したところから考えて、今年4月には中国は少なくとも1万4千台の侵襲的な人工呼吸器を提供できる。3月11日、中国はイタリアに1千台を提供すると約束した」と述べた。