鏡を見て、頭頂部の髪が薄くなっているのに気付き、南京の大学1年の女子大生・雅麗さんは、「ダブル11」当日に、抜け毛を防止できる「ヘルメット」を購入。今月の最大の出費となった。
梨の果汁を煮詰めて生姜やナツメなどの生薬と蜂蜜を加えた「秋梨膏」の飴、温かくなるナプキン、コラーゲンイオンヘアードライヤー、免疫力が高くなるグミなど、中国の若者の「ダブル11」の買い物かごには、ヘルスケア関連の商品がたくさん入れられていた。専門家は、「多くの商品がうたっている効果は大げさ。それでも、若者は依然として、それらの商品がもたらしてくれる『安心感』を買っている」と指摘する。
ワクチンを打ち、栄養補給剤をたくさん買い、脱毛防止に気を配り、フィットネスに励むといったように、今の若者はヘルスケア関連の消費にどんどん足を踏み込んでいる。そして、「両親と一緒に健康維持」が新たなトレンドとなっている。
北京在住の男性・張偉さんは、「まず自分のためにランニングマシンを買った。そして、両親と自分のために、がん検診を含む人間ドックを申し込んだ。新型コロナウイルス流行により、健康に対する考え方が大きく変わった。以前は、病気になったら治療と考えていたが、今は管理して健康を維持したいと思うようになった。今後は家族で1年に1回は人間ドックを受ける」と話す。
健康診断のほか、口腔ケアも、今年、ダブル11を開催したECプラットフォームで、大人気となった。中国の口腔医療ケアサービス消費の新たなバロメーターを示しているほか、多くの人の口腔ケアや維持に対する意識が高まっていることを示している。ECの普及により、より多くの若者が歯の健康や白い歯に関心を持ち、その消費の中心となっている。
ヘルスケア関連の消費が中国の若者の「硬直的需要」に
各大手ECプラットフォームの統計もこうした現状を証明している。「ダブル11」の期間中、天猫で「95後」に最も人気となった医薬商品トップ5は、健康診断、医療用ガーゼ、ヒトパピローマウイルス(HPV)ワクチン、インスタントツバメの巣、コンドームだった。ショッピングサイト・京東健康でも医療サービス系の消費が激増した。うち、ワクチン系のサービスが20倍増、口腔ケアサービスが12倍増だった。ショッピングサイト・蘇寧超市の医薬品系の売上の増加も際立っていた。特に、紫外線殺菌ライト、血糖値測定器、血圧計、小型マッサージ器などの家庭用医療機器が大人気となった。
ヘルスケア関連の消費が若年化しているのを背景に、ヘルスケア関連の消費全体の傾向にも変化が生じている。天猫のこれまでのダブル11の栄養補給食品の売上高を見ると、最も人気だったのは2018年はクコ、2019年は赤豆ハトムギ で、2020年はツバメの巣と生薬・阿膠がかなりの割合を占めた。95後の間で最も人気だったヘルスケア系の商品は、上から順番に健康診断、医療用フェイスパック、HPVワクチン、インスタントツバメの巣、コンドーム、マスクだった。うち、男性に最も人気だった商品ランキングには、発毛系の商品が含まれており、女性に人気の商品ランキングには、意外にも健康診断とHPVワクチンが入っていた。
小都市のヘルスケア関連の消費の増加ペースが大都市を明らかに上回る
ヘルスケア関連の消費が小都市に向かって顕著な広がりを見せている点は注目に値する。阿里健康のビッグデータを見ると、小都市のヘルスケア関連の消費の増加ペースは大都市を明らかに上回っており、うち、安徽省宣城市の1人当たりのヘルスケア関連の平均消費額は136%増と、北京、上海、広州などの一線都市を大幅に上回っていた。小都市別の「95後」のヘルスケア関連の一人当たりの平均消費ランキングトップ5は、■陽市(■はてへんに曷)、温州市、▲州市(▲は章に夂の下に貢)、保定市、阜陽市だった。
その他、今回の天猫のダブル11のヘルスケア関連の都市別一人当たり人の消費ランキングを見ると、トップ3の上海、北京、杭州に、南京、舟山、成都、広州、深センが続いた。
若者の健康問題が話題に
「爆買い」のほか、「健康診断の結果を見るのが怖い若者」や「『90後』が植毛の中心に」などの話題の検索が大人気になり、若者の健康問題に対する注目度がアップしている。
あるネットユーザーは、「今年で二十ちょっとだけど、肩は47歳、膝は51歳、背中は60過ぎ、腰はもうすぐ90歳という感じ。それに、私の髪の毛の多くはすでに『安らかにお眠り』になった……」と、 自分のボロボロの体を自虐的に形容している。2019年に実施された働いている人を対象としたある健康に関する報告によると、「自分の体の状況は良好」と感じていたホワイトカラーはわずか2割にとどまった。ここからも健康問題が若者の真剣な悩みの種になっていることが分かる。
北京同仁堂健康薬業股フン有限公司(フンはにんべんに分)の趙子強・EC最高執行責任者(COO)は、「ヘルスケア関連の消費が若年化している背後には、自分の健康管理を重視している若者がいる。それは、消費観念の転換、高度化を反映している。『90後』や『00後』と、その上の世代の人々の健康に対する観念は全く違う。上の世代は、『治療と補助』という観念であるのに対して、若者の観念は『養生と予防』だ」と分析する。
南京医科大学第二附属病院健康管理センターの主検医師・戴瑛氏は、「ヘルスケア関連の消費グループの若年化は、病気の若年化、不健康な行為、ライフスタイルの広がり、社会的プレッシャーによる健康不安の増大などの問題を反映している」と指摘する。
中国抗癌協会の関連報告によると、現在の若者の食事は『赤肉』が多く、脂分と油分、塩分を多く含む食品を食べ、長期に渡って夜更かしをしているなど、不健康なライフスタイルを送っている。それらは、がんの若年化のリスクを高める要素となる。
それについて、戴氏は、「まず自分で自分の健康の責任を負わなければならない。若者が健康を追求する場合、まず良好な生活習慣を身につけることから始めなければならない。例えば、長期にわたる夜更かしを避け、プレッシャーに直面した場合は、ポジティブなメンタルで、積極的な対応をする。また平日も運動を心がけ、体質を強化し、ヘルシーな食品をたくさん食べるなどだ」とアドバイスする。
総合保健産業に黄金時代到来?
供給側からすると、ヘルスケア関連の消費が、多くの業界の企業に発展の新たなチャンスをもたらしている。最も分かりやすい例は、2016年に阿里巴巴(アリババ)が打ち出した「ダブルH(Happiness&Health)戦略で、健康を将来の2大目標の一つに掲げていた。
人々が積極的に健康を追求するようになっており、それが、健康食品・グッズ業界の市場に対する見通しに、基礎を築いている。
データ分析機関の艾媒諮詢(iiMedia Research)が今年4月に発表した調査報告によると、過去6年、中国の健康食品・グッズ業界の市場規模は安定して毎年二桁ペースで拡大し、2019年にはその規模が約2227億元(1元は約15.8円)に達した。(編集KN)
>>>丸わかり!中国キーワード
「人民網日本語版」2020年11月20日