ウクライナ危機が勃発して以来、ロシアのウクライナ侵攻を封じ込めるために欧米が使える手は2つあった。一つ目はロシアのプーチン政権に対する経済制裁を強化すること。二つ目は崩壊の危機にあるウクライナ経済を立て直すためにできうる全ての策を講じることだ。
首脳会談に向かうウクライナのポロシェンコ大統領(右)、ドイツのメルケル首相(中央)、フランスのオランド大統領(11日、ミンスク)=ロイター
これからの数日間、国際的な注目は再びロシアへの制裁を課すべきか否かに集まる。11日の夜にベラルーシのミンスクで開かれた首脳会談で、ドネツク州とルガンスク州における停戦合意に向けた話し合いがなされた。
この話し合いの後、欧米諸国はロシアの侵攻を阻止するために、さらなる制裁が必要か否かの決断を下さなければならないかもしれない。だがその結果がいかなるものであれ、米国とその同盟国はウクライナ経済をなお一層支援していく必要がある。直近の国際通貨基金(IMF)をはじめとする援助国からの努力が十分でないということは、あらゆる点で明らかになっている。
■ウクライナのGDP、8%縮小
ウクライナの経済はなお切迫した状況にある。同国東部での戦闘によって、炭鉱や製鋼所の生産が停止に追い込まれたことで事態は一層悪化した。2013年第4四半期から14年第3四半期にかけての実質国内総生産(GDP)は、8%縮小した。14年12月の外貨準備高は、およそ1カ月の輸入額に相当する66億ドルに落ちこんだ。これは、外貨準備高の必要最低水準の目安とされる輸入額の3カ月分を下回っている。同国の通貨フリブナが崩壊したことで、インフレ率の急騰や生活水準の低下を招くだろう。
ウクライナは長い間、この事態に対応するためIMFや資金援助国に支援を求めてきた。14年4月にはIMFは170億ドルの金融支援策を打ち出し、ほかの資金援助国も100億ドルの支援で同調した。14年末には、欧米の専門家らがウクライナ経済を安定化させるには、必要とされる総額およそ420億ドルの穴埋めのために、さらに150億ドルの支援が必要だろうと指摘している。IMFとほかの資金援助国は今後数日間で新たな救済支援策の詳細を発表する。だが土壇場で驚くようなことが起きない限り、支援策は必要額を十分に満たすものにはならなさそうだ。